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ライフジャーナル(大類久隆)

種子法の廃止から見える世界【後編】

2018.01.02

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、種子法の廃止に垣間みえるグローバリズムについて、前後編にわたりお届けします。

> 前編はこちら 「種子法の廃止から見える世界」【前編】


前編では、種子法の基本から、種子法へのグローバル企業の関わり、われわれ消費者ができること、までお伝えしました。

後編の今回は、いよいよ種子法につながる、今の世界の仕組みとグローバリズムとの関係について考えてみます。

世の中を取り巻く利害関係

ある国に起きている紛争や戦争が政治的な対立や問題であると思っていたことが、実はグローバル企業と当事国や周辺国との利害関係のもつれによるものであることがあるようです。 例えば、特に資源が豊富な途上国に対して融資を持ちかけ巨額な負債を負わせて経済を疲弊させて、その融資の使いみちは外国企業のインフラ工事などにまわり、その回収資金を自国に還流させるというケース。当事国の天然資源の利権を優位に誘導し、政治的影響力を拡大させ国家元首をもすげ替えて、いずれすべてをコントロールしてしまうことになります。

また、周辺諸国との緊張関係を長期間にわたり作り出され、偏った情報を流し続けることで世論を誘導して政治的な基盤を作り出し、その利益に沿うように政治家を誘導して、やがて国民に誤った愛国心を強固に植え付けていく場合もあります。他の考え方を持つ人々を国民自身が非難するようになり、軍事予算の大幅な増加につなげ戦争という最も愚かな行為しか選択できないように仕向けていきます。この方法を周辺国のすべてに同時進行で行っていくのです。

さあ、今の日本の状況に重ね合わせてみてください。 もちろんこれは、一企業だけで行えるものではありません。企業・官僚・政治家などが連携することで初めてこの仕組みが完成するのです。この潮流が「グローバリズム」の本質なのです。

巨大なグローバル企業のお金と物が国境を越えて自由に動く世界は、自由貿易によって世界経済が統一するという、新しい世界秩序のようにとても魅力的に見えるかもしれません。しかし、これは形を変えた企業による帝国主義か植民地主義に他なりません。

グローバリズムが行き着く先

この「グローバリズム」が極まっていく世界とはいったいどのような世界なのでしょうか。

ごく限られた多国籍企業の利益のために、国民はすべての個人情報を管理されます。子供の受ける教育は偏り、極端な医療で大量の薬品を摂取し、あらゆるメディアは真実を語ることはなく、恐ろしいほどの経済格差の中で国民は喘ぎ続けることになるでしょう。

つまり最初は「新自由主義」として歓迎されたものが、いずれ完全な「全体主義」に陥っていくということです。まるでイギリスの小説家「ジョージ・オーウェル」が描いた「1984年」の世界そのままなのです。しかし、これは未来小説やSF映画の話ではありません。すでに現実に起きている問題なのです。

さて、ここで最も重要な視点を理解いただくために全体像を整理したいと思います。「グローバリズム」とは、市場主義経済が極端に進んだ形になります。本来、資本主義国家は国民の自由や権利が保証された民主的なイメージがありますが、「グローバリズム」が進むことによって、まったく逆の閉鎖的な社会に進むということです。つまり、かつてのソビエトを始めとするような共産主義国家の状況に近づくということです。それはなぜでしょうか?

そもそも「グローバリズム」という考え方に軸を置く、多国籍企業の経営陣や関わる資本家をはじめとする協力者たち「グローバリスト」は、その組織の性質上、国家という概念が薄く、あくまでも自分たちの利益と権力だけを維持することが最優先であり、その力を維持するために国民には従順な消費者のままであることを望んでいます。

つまり自分たちがすべての富と力を保持して、一般の国民が必要以上の社会的影響力や経済力を持つことを警戒しています。一般の国民が運よくその恩恵に預かれたとしても、やがて上手に懐柔されてしまうことが多いのです。 これが世界の大きな流れとなっています。そう聞くと「やはり夢も希望もない!」と言いたくなりますが、実はもう一つの大きな流れも起きているようです。

「ナショナリズム」と「グローバリズム」

ここではあまり政治的に詳細な話題は避けて概要だけに留めたいと思いますが、その「グローバリズム」に対抗する形で明確な国家主義を掲げる「ナショナリズム」が起きています。

「ナショナリズム」と聞くとどうしても国粋主義や愛国主義者をイメージして、怖いという印象がありますが、世界的に言うとそうではなく、国家や国民の利益を優先した考え方に基づいて政策を決定していきます。 今、「ナショナリズム」が「反グローバリズム」の立場を取って台頭しています。その特徴としては自国の経済や文化、習慣を守り同時に他国も尊重するという立場であることです。

しかし、「ナショナリズム」に軸を置く政治家や団体は大手メディアから悪者として報道されています。それは前述したとおり、ほとんどのメディアが「グローバリズム」側にいるため、公平な報道がなされていません。 これがいま世界で起きている大きな動きといえます。実は世界規模での国家の対立構造は日本では昔から「資本主義 対 共産主義」と捉えられており、これが常識であってすべてこの構造が根底にあったうえで関係性を読み解こうとしています。しかし、これが本質的に間違っているのかもしれません。

では、「日本自体はどうなのだろう?」そういう疑問が浮かびます。
日本の状況をうまく言い当てているのは、思想家の内田 樹(たつる)氏の言葉です。

「グローバル競争に勝つ為に『グローバル競争に勝たないと日本が潰れる』というロジックで、国民のナショナリズムの感情に訴えかけて、グローバル競争に勝つ為に『日本企業』『富裕層』をどんどん支援しないといけない、という世論になりがちです。税制でも労働法制でも原発問題でも、あらゆるテーマで「日本企業が勝つ為に日本国民はどれだけ犠牲を払えるのか?」ということが問われています。ここではグローバリズムとナショナリズムが対立的ではなく、グローバル競争に勝ち抜くためにナショナリズムの意識が動員されている。ナショナリズムがグローバル競争を支えているんですね。」

つまり、表向きナショナリズムを訴えながら、本音はグローバリズムを推進しているのが日本の政治の現状という考え方です。すべてがそのロジックで動いており、様々な問題の本質なのかもしれません。

いま世界がこの大きなうねりの中にあり、日本も例外なくその潮の流れの中でもがいていると言っていいでしょう。グローバリズムの巨大な流れが押し寄せる中で、種子法の廃止の問題は、その氷山の一角でしかなく、すべてはグローバル経済を完成させるための準備であることが見えてくるのです。

わたしたちができること

このようにお伝えしてくると、「その状況を少しでも改善する手立てはないのか?」と思われるでしょう。それはグローバリズムではなくローカリズムを守ることです。私たちが進めてきた、自然栽培や自家採種の取り組みは農業や食文化を守るだけでなく、地域の経済や環境を守り、地域の多様性を尊重することで永続的な価値を持つ社会が生まれます。その集まりが本来の国家のあり方なのです。

種子の多様性を奪うことは、人間の多様性を奪うことでもあります。 今回は種子法の廃止の問題から見えてくる、世界中で起きている「グローバリズム」問題を浮き彫りにしてみました。私たちが本当の意味で豊かな未来を築くためには、ひとりひとりが、何が問題の本質かを見極め、与えられたものを深く知らずにただ受け入れて生きるのではなく、自ら生きるための選択を能動的にしていくことが大事です。 本質的には世界に右も左もないのです、あるのは少数の上と多数の下だけなのです。

最後にインドの哲学者であり環境活動家でもある「ヴァンダナ・シヴァ」の言葉を紹介します。

『すべての生命は貴重である。 私的財産の保護は、その下であり、制限されるべきである。 環境が先であり、私的所有権はその下である。』

> 前編はこちら 「種子法の廃止から見える世界」【前編】  


【出典元、参考資料】
農林水産省/主要農産物種子法 農林水産省/主要農作物種子法を廃止する法律案の概要
『山田正彦』 オフィシャルブログ
『日本の種子を守る会』 ホームページ
『TPPと規制緩和を問い直す』 ジョセフ・E・スティグリッツ著
『緑の革命 』 ウィキペディアより
『エコノミック・ヒットマン途上国を食い物にするアメリカ』 ジョン・パーキンス著
『内田樹の研究室』『脱グローバル論』 内田樹著
『緑の革命とその暴力』 ヴァンダナ・シヴァ著


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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