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ものづくりのこと

雑貨

本宮石鹸工業所「残していきたい仕事」

2017.06.26

訪れた工場の設備はとてもシンプルだった。
 「石けんの原材料としておいてあるのは、油と苛性ソーダの2つだけなんです。何もないところが特徴ですかね」と、鈴木さんは明るく上品に笑った。

 本宮石鹸工業所は、1922年創業の石けんメーカーだ。今は三代目の鈴木玲子さん(長女)と松原美子さん(三女)の姉妹二人で昔ながらの製法にこだわり、しょうゆ油を使った石けん「サンダーレッド純粉石鹸」を手づくりしている。

 原材料のシンプルさには驚いたが、使う機械の少なさには、さらに目を見張った。工場にあるのは、反応釜と呼ばれる油と苛性ソーダを混ぜるときに使う大きな釜、それにできた石けんを細かく砕くための粉砕機のみ。石けん作りは釜でぐつぐつ煮るイメージだったが、サンダーレッドは冷製法という火を使わない方法で作られている。これは、油に苛性ソーダを加えて混ぜたときに発生する反応熱のみで石けんをつくる方法だ。そのため、加熱にエネルギーを使わない。そして排水も出ない。サンダーレッドは、作る工程からとても環境に優しい石けんだ。
 この製法には、更に良い点がある。それは、油をまるごと使うためしょうゆ油の中にあるグリセリンやその他の有用な成分が石けんの中にそのまま残り、それらが保湿剤の働きをして、肌に優しい石けんになる。

 なぜしょうゆ油を使った石けんを作り始めたのかというと、創業当時の工場があったところがしょうゆの産地の近くだったため、手に入れやすい油だったから。
 「現在は石けんというとヤシ油が主ですけど、それは日本では採れないんですよね。輸入して初めて入ってくるものなんです。しょうゆ油は、日本人がおしょうゆを使う限り出てくるものですし、創業当時も大変良い材料だったんだと思います」と鈴木さんが教えてくれた。
 大豆を使ってしょうゆを作る。そこで出た油はサンダーレッドになる。サンダーレッドで洗濯をすると、排水は早く生分解されて水が汚れない。その水からまた大豆が作られて、それがしょうゆになる。しょうゆの文化がある限り続いていく循環だ。さらに松原さんが言葉を続けた。
 「しょうゆ油からサンダーレッドを作るだけじゃなくて、そういう自然の循環の中に自分があるということを伝えたいですね。そのうえ、しょうゆ油は石けんの油として成分も素晴らしいんですよ」

 石けんは油の中にある脂肪酸からできる。脂肪酸といってもいくつも種類があり、その成分の違いで、油の性質が違ってくる。例えばオリーブオイル。冷蔵庫に入れると、白く濁ってオリがでてくる。5度以下で固まる性質を持っているからだ。
 大豆油の凝固点は、マイナス8度。油の固まる温度が石けんの何に関係するかというと、水に溶けやすいかどうか。マイナスでしか固まらない大豆油は水によく溶ける。逆に15~25度で固まってしまうヤシ油は、水に溶けにくくお湯を使わないと完全には溶けない。そのため、洗濯石けんにするには、溶けやすくするためにアルカリ剤などの助剤を入れることが多い。それに比べてサンダーレッドは助剤が必要なく、原材料の表記もとてもシンプルだ。
 「うちなんて脂肪酸ナトリウムしか書いてないから、欄が余っちゃって」と松原さんはおどけた口調で、笑いながら話す。
 お父さんの代では、一時期いろいろな石けんを作っていた。石けんに炭酸塩を入れると、量は倍ほどになるし、洗浄力も増す。取引先のクリーニング屋さんから依頼があれば、合成洗剤も作っていた。
 しかし、1950年代後半に「本物だけで勝負することにした」と、お父さんはサンダーレッド以外の製造をやめてしまった。その時代は、合成洗剤と化学繊維がセットになって登場した頃。洗濯機の普及もあいまって、合成洗剤の使いやすさが浸透し、石けんの需要が大きく減ってしまったときだった。時代に逆らってまで石けんを作り続けるからには本当に良いものを作ろうと、添加物を一切使用しないこの石けんを残したという。その後石けんが売れない辛い時代が続いたが、合成洗剤は石けんに比べて生分解に時間がかかり環境に負荷がかかることから、石けんの良さが見直される時代が来ることを信じて作り続けた。
 1970年代になると、日本各地で公害が社会問題となり環境をめぐる市民運動が活発化した。そんな中、環境や身体に配慮した商品を求める人たちに、サンダーレッドは支持されるようになる。

 鈴木さんと松原さんはどうして家業を継ごうと思ったのだろうか。
 「最初は、親孝行がてらちょっと手伝おうかなっていう気持ちだったんです。作っていると、親の苦労を近くで見てきたからか、私の血一滴もみんなこの石けんの売上げでできているんだなぁと思えてきて……。そしたらやっぱり続けていきたいって思ったんです」
 10~20代のころは、父親の仕事内容に興味はなく、どうやって石けんを作るかなんて聞いてみようとも思わなかった。しかし家の隣は工場で、工場からの声・音・匂いすべてが意識せずとも生活の一部だった。自然と、父親や母親の仕事ぶりを見聞きしていたという。
 父の「会社を大きくするな」や「一生懸命作ることが愛なんだ」といった仕事についての言葉を、今になって理解できてきたと感じる。
 出身である茨城の方言で、取引先の電話に出ていたお母さん。今でも、「お母さんお元気ですか」「茨城弁もう一回聞きたいね」とお客様から言われる。家内工業の良さ、今はそれを誇りに感じている。

 サンダーレッドを作りながら、細かくて面倒と思われがちな作業を「これ、お父さんならやった方がいいって言うよね」と、心の中でお父さんに聞きながら仕事をするという松原さん。鈴木さんも続けて言う。

 「家業を継いだ初めのうちは思っていなかったんですけど、昔ながらのエネルギーをあまり使わない作り方や、しょうゆ油の素晴らしさのことを思うと、誰かが細々とでも続けていったらいいかなって思うんです。面白い仕事ですよ」
 二人の言葉の節々からは、この仕事への愛情がひしひしと感じられた。

サンダーレッド純粉石鹸
カミナリにびっくりするように汚れが落ちるのが名前の由来。洗濯から食器洗い・お掃除に使える万 能な粉石けんです。1922 年創業からつづく製法で、醤油を搾った残りの大豆を使っています。

本宮石鹸工業所:1922年創業の石けんメーカー http://www.thunder-red.jp/

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このコラムを書いた人

小谷 彩野

ナチュラル・ハーモニーの宅配の電話窓口・販売促進担当。ナチュラルな子育てをゆる~く目指して日々を過ごしています。好きな言葉は「足るを知る」。

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