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社会・環境

ライフジャーナル(大類久隆)

「民主主義は終わったのか?」後編

2025.07.01

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、今の日本の民主主義における問題点や、民主主義の未来について考えてみたいと思います。

前編はこちら
「民主主義は終わったのか?」前編


「民主主義は終わったのか?」後編

世界で民主主義が揺らいでいる
それでも未来に希望がある理由

前編では、民主主義を標榜する世界の国々で、まるで逆行するかのような政治的、経済的問題が生じていることを書きました。民主主義については、その歴史や定義、また各国の状況を記せば、本が何冊も書けるほどのボリュームになると思います。そこで後編は、日本で起きている、民意とのズレの原因となる根深い問題に焦点を当て、できるだけ客観的にまとめてみます。また、海外の新たな取り組みの紹介から、民主主義の未来には希望があることもお伝えしたいと思います。

日本の構造的な問題

日本の民主主義が機能しなくなっている、民意とかけ離れている、と感じられる理由には、複数の構造的な要因が絡み合っていると言えます。

一つ目の問題として選挙制度のゆがみがあります。現在の制度では、得票率が低くても議席の大多数を占めることが可能であり、ここですでに民意と議会の構成にズレが生じます。そして、地域間での一票の格差の問題もあり、これにより民意が反映されていないと感じる有権者も多いと思います。

二つ目は、実際の政策立案が多くの場合、官僚主導で行われており、政治家はそれを追認するだけという立場であることです。官僚は選挙で選ばれることはないため、市民から監視の目が届きにくく、市民との対話も乏しく信頼関係が築かれにくいことから、市民は決まったことに従わされる感覚が強く、政治に関わることへの無力感に繋がっていると言えます。

三つ目は、多くの大手メディアの情報が特定のバイアスを持っており、政治的癒着や広告代理店やスポンサーへの依存により、政治や政策への批判的な報道が制限されることが多くなる点です。また、同時にSNSなどでは、多様な情報が増えた一方で、特定の情報だけを受け取ることによる偏りや分断が起こり、市民が事実を共有して冷静な議論を行う土台がとても脆弱になりつつあります。

四つ目は、アメリカとの関係性が日本の政策決定に大きな影響を与えていることです。安全保障や経済協定、グローバル市場優先の外圧が、日本の国益や市民の声よりも優先されることで、市民は自分たちに決定権はないと感じるようになります。

五つ目は、さらに、選挙以外の市民が参加する討論会や住民投票などの習慣や機会が極端に少ないことです。そのことにより、政策の決定などが閉鎖的になり熟議の文化が育ちにくく、決まったことに従うという意識が根強くなり、声を上げても無駄だという諦めが広がってしまいます。学校や社会でも政治を学ぶ機会が少なく、むしろ政治をタブー視してしまうことで、政治的な事柄には触れないほうが安全だと考える人が多い風潮があり、政治との距離ができてしまっています。

台湾の先進的な取り組み

では、このような民主主義の機能不全ともいえるような状況は、改善することができるのでしょうか?確かに現代の民主主義は揺らいでおり、硬直化した古い枠組みに無理が生じていることは確かです。しかし、これは民主主義が終わったのではなく、アップデートされるべき時が来たと私は考えています。

前編で紹介した民主主義指数で、アジアの中で最も上位であった台湾の取り組みについて紹介します。天才といわれるデジタル担当大臣のオードリー・タンが主導で進めている、デジタル民主主義の先進的な取り組みです。「vTaiwan(virtual Taiwan)」はオンライン上で政策決定を市民と共に行うプラットフォームですが、単純なアンケートや意見を聞くというものではなく、政策の初期段階から市民が関わり、合意形成に参加できる仕組みを作っています。特徴として、ある議論するテーマに対してオンラインで議論を行い、その意見を「Pol.is」というAIの対話ツールを使って意見を可視化・分類することで、対立点ではなく合意点を抽出する設計になっています。このデジタル熟議プラットフォームとも言うべき仕組みは、国際的にも大きな反響がありました。


限界はあるが終わりではない

あくまでもこれは一つの例になり、まだ世界には新たな民主主義を模索する取り組みがあります。共通するのは、熟議民主主義といって市民が議論に直接参加し、対話や学びを重視して進める民意形成の仕組みです。

民主主義は本来、次のような前提があって初めてうまく機能します。市民のリテラシーの高さ、公共性の意識や共通する価値観などです。しかし近年は情報で分断され、短期的な利益を優先するなど、社会全体の利益という点での合意形成が難しくなっています。現代の民主主義のズレは、制度の限界ではなく、その運用の方法やそれを支える文化の未熟さが起因していると言えます。だからこそ形骸化した民主主義をアップデートして、育てていく姿勢が大切だと思います。




■参考資料:
・vTaiwan公式ホームページ
・現代ビジネスオンライン「市民に開かれた政治を」…日本では絶対にあり得ない「オープンな政治」を台湾が実行できた秘訣に迫る


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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