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ライフジャーナル(大類久隆)

個を守ることが未来を守ること

2022.01.01

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、コロナ禍でますます加速する世の中の潮流について考えてみました。


個を守ることが未来を守ること

私たちひとりひとりが
自然との繋がりを意識しよう

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
新たな年を迎えられたことを感謝したいと思います。

ちょうど一年前の年始のライフジャーナルで、「いまだに(新型コロナウイルス)収束の兆しが見えない状況のようですが、私たちのウイルスに対する基本的な姿勢は変わっていません」と書きました。これについては引き続きブレる事なく、自身の免疫力を保ことだけが大切という姿勢で取り組んでいます。

依然として続くコロナ禍にあって、生活習慣がすっかり変わってしまった人もいると思います。世界ではワクチンの強制接種や相変わらずの外出規制など個人の生きる自由を厳しく制限する状況が続いています。

注目される「メタバース」とは

そのような環境の中、世界の潮流がどうなっているのかというと、最近「メタバース(Metaverse)」という言葉を盛んに聞くようになりました。
メタバースとは、コンピュータネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのことを指す、と説明されています。まさにヴァーチャルリアリティの世界の中で、あらゆるコミュニケーションや商業活動を行う場を作り出すという事です。

こう聞くとゲームの世界かと思われがちですが、世界中の企業が真面目に商機を見出そうとしています。
このメタバースとは英語の「何にでもなれるが、何もない(meta)」と「巨大な空間(universe)」組み合わせた造語なのですが、アメリカのニール・スティーヴンスンというSF作家が1992年に発表した「スノウ・クラッシュ」という小説の中で使われた言葉でした。

なぜこのような話を紹介したかと言うと、これは他の国の一部の人たちの間で流行っているというレベルの話ではなく、世界中の先進国を中心とした国が国家の事業として位置付けているのです。

ここまで聞いても掴みどころのない話にしか聞こえないのですが、日本も例外ではなく、内閣府が発表している「ムーンショット計画」にはしっかりとメタバースの世界観や技術が盛り込まれています。

「ムーンショット計画」とは、科学、医学などの分野で破壊的技術革新によって人々の幸福に繋げる未来を創り出そうというものです。
大きな目標として環境問題、社会問題、経済問題の解決がありますが、その中のひとつに2050年までに「人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現する」とあります。

この意味するところは、コンピュータネットワーク上に築かれた仮想空間の中にアバターを作り出し、あるいはロボットを自分の分身として操作して社会生活や仕事を行う事や、生活を取り巻くすべての環境をコンピュータネットワークと接続する事で常に情報取集を行う事や家電や車の遠隔操作も可能にしようというものです。
ここに挙げた例はごく一部で、あらゆる環境を最先端のテクノロジーによってコントロールして、人々が幸福に暮らせる未来を作ろうという、大学や企業を巻き込んだ国家プロジェクトです。

かなり広範囲にわたる計画のため全体像をここで描くのは難しいのですが、ここまで読んでみた皆さんの印象はいかがでしょう。ここからどのような未来が見えて来るでしょうか?

私は最近の世の中の動きやここで紹介した計画を見て、その方向性にとても違和感と危険性を感じています。
もちろんそれぞれ解決しようとする個別の目標や技術を否定はしません。しかし、そもそも解決しようとしている、社会問題の本質を国家として理解できていないのではと思います。

その問題の本質については、昨年の年始のライフジャーナルに詳しく書いていますのでぜひご一読ください。その根源的とも言える問題が解決しない限り、どのような試みも絵に描いた餅であり、どれほど科学技術が進んだとしても本当の人々の幸せを実現するには程遠いものになるでしょう。

民間企業と政治・経済

さて、「スノウ・クラッシュ」という小説に描かれている世界はアメリカの近未来、連邦国家はすでに機能しておらず、各都市が都市国家としてフランチャイズされて経営されている世界です。
すでに世界の技術が均衡しテクノロジーの優位性を無くし、もはやアメリカが世界に誇れるのは音楽、映画、ソフトウェア作り、高速ピザ配達の4つだけで、そのためピザ配達人は特権階級で、ピザ配達人養成の専門大学まで存在しているという奇想天外な設定です。
いまだにこの小説のファンが多く、その後のインターネット業界やヴァーチャルリアリティの世界に少なからず影響を与えています。

ここで注目したいのは、国家が都市ごとに区切られフランチャイズで経営されている点です。つまり事実上国家が破綻して民間企業によって管理されている世界なのです。

実はこれが将来的に現実化するのではないかと思わせる事実がすでに起きています。
もちろん今のところ一般企業が直接的に国家を運営する事はありませんが、すでに間接的な影響力を政治に行使していると言えます。

例えば、このコロナ禍において製薬会社の影響力が如何に大きいかは、皆さんすでに知るところですが、製薬業界と医療業界、政治家との繋がりは利害関係そのもので、新薬の処方や政策に対して行使した力は国民の生活に直結してきます。

一方、あらゆるメディアや報道機関はどうでしょうか。テレビや新聞で報道される内容は、その伝え方や解釈によって世論に大きな影響を与えます。当然そのスポンサーである企業の意向にも左右されます。

また、スマートフォンなどを介したインターネット含むテクノロジー企業はどうでしょう。今では多くの人にとって当たり前の存在であり、あらゆる情報を網羅、提供しています。
その中で買い物から教育、音楽、映画など生活がすべて完結してしまう程の情報量と利便性を持っています。今は金融機関とも連携して各種の支払いからローンの契約まで可能であり、キャッシュレス化が進むにつれ益々生活手段として欠かせないものになっています。

これらの話を聞いても個別の話であり、それぞれの影響力は分かるが、国の運営にまで影響する事はないのでは、と思われるかもしれません。
しかしデジタル化によって医療、福祉、教育、仕事環境、家庭環境などすべての個人情報の管理が促進され、一見すると便利な世の中に感じる反面で個人の権利やプライバシーがなくなっていく懸念があります。

また行政機関で外部の一般企業に事業委託や人材派遣業社が介入するケースが多くあります。
さらに、かつて多くのインフラに関わる事業が民営化されましたが、鉄道や郵便事業に続き水道事業もすでに一部の業務委託が進んでいます。
これらがどういう意味かと言うと、少しずつ政府の業務が縮小して、民間企業がその主な役割を担うことになり、あらゆる情報と権益がそこに集中する事になります。

歴史上では、ひとつの多国籍企業が発展途上国の政治家を懐柔して国の法律を変え、政治を乗っ取ってしまい、その国の経済をすべて一企業の有利に動かすという例がありました。

民間企業の最終目的は当たり前ですが利潤の追及です。
もちろん限られた部分では、その目的と同時に人々に役立つサービスや商品があると思いますが、ある範囲を超えて独占的になると、企業はあらゆる個人情報を蓄積して管理し、逆に利益にならない仕事は合理化され切り捨てられる事になる。

それが、このムーンショット計画やデジタル化がきっかけになり一気に加速する可能性があります。

便利な世の中でも大切にしたいこと

ここまでの内容を読んで、点が線として繋がって全体像が浮かび上がってこないでしょうか?
便利な世の中だと思って、気が付いたらすべてを管理されていた事になります。

それによって失うものは何でしょう?
それは、皆さん個々人の大切な思考や時間です。情報が氾濫し自分が考えるより前に、AIロボットから健康、教育、趣味嗜好などあらゆる生き方に関する提案や指示が予測され、自分自身の大切な考えや思いを育む時間を失う事になります。

テクノロジーの進化と共に、SF小説か映画のような世界観に誰しもが憧れるでしょう。
ただ、これらの計画から見える景色は残念ながら、バラ色とはいかないでしょう。私たちが取り組む食や農業の分野でも、テクノロジーによってコントロールが可能と考えているようです。

そこに欠落している視点は、やはり自然への尊重と共存する生き方です。それを抜きにしてどのような国の運営も計画も成り立ちません。

今回のお話は、現在起きている事柄から見える近未来に起きる可能性を描いてみました。
しばらくの間、生活習慣と社会構造の変化に世の中が揺れ動くことになるかもしれません。ぜひ、自分自身の考えや思い、そして大切な時間を無駄にしない生き方を選んでいただきたいと思います。

今年も皆さんにとって平和で調和のとれた一年であることを心よりお祈り申し上げます。

『考えるとは注意深く直面し、抵抗すること。』

―― ハンナ・アーレント
ドイツ出身ユダヤ人政治哲学者


【参考資料】
『メタバース』 ウィキペディア
『スノウ・クラッシュ』 ウィキペディア
『ムーンショット計画』 資料一式 内閣府


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?



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