ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は世界を代表するエコビレッジ「ダマヌール」を紹介したいと思います。
自己の精神的成長を目指す共同体
世界有数のスピリチュアルコミュニティ
今回は世界を代表するエコビレッジ「ダマヌール」を紹介したいと思います。おそらく、エコビレッジというよりもスピリチュアルコミュニティとして知る人も多く、その表現の方が適切かもしれません。日本ではことに、スピリチュアルコミュニティと聞くと、宗教色が強く閉鎖的な共同体をイメージしがちですが、一切の宗教とのつながりはなく、基本的なルールさえ守れば、とても自由でオープンな共同体と言えるでしょう。
ダマヌールは、イタリア北部ピエモンテ州のヴァルキュージャ地方に位置する共同体で、1975年に創設者であるオベルト・アイラウディ(別名:ファルコ)とその仲間たちによって設立されました。彼らは人間の意識拡大や精神的な成長を目指し、自然との調和を追求する生き方を実践しています。ダマヌールは、共同生活、環境に優しい技術、芸術、スピリチュアリティ、教育など、多岐にわたる活動を行うことで知られています。設立されて40年以上の歴史から見ても、その蓄積された哲学や取り組みは、十分に説得力を感じます。
ダマヌールは、日本にも支部があるなど、情報がわりと広く入手しやすいと言えます。共通する考え方として、共同生活による人間関係の中で、個人の意識や精神性を高めることを重視しているのが特徴です。ダマヌールでは25以上のコミュニティの連合体を構成しており、600人を超える市民が在住しています。住民は集団で生活し、農業や手工業などを通じて生活資源を自給自足しています。コミュニティは、いくつかの「ヌークレオ」と呼ばれる小さな集団に分かれており、それぞれが異なるテーマや目的を持ちながらも、全体として連携しています。
また、ダマヌールでは独自の社会システムが導入されており、年齢や性別に関わらず、さまざまな役割を持ちながら共同生活に貢献しています。例えば、農業や工芸品の制作、教育、環境保護活動などが行われており、個々のメンバーが持つ才能やスキルを最大限に発揮できるような環境が整っています。さらに、貨幣経済に依存しない独自の通貨「クレディト」が流通しており、これによってコミュニティ内での物資やサービスの交換が行われています。
施設や取り組み
ダマヌールを最も象徴する建造物といえば、地下神殿と呼ばれる地下に広がる巨大な複合施設。15年以上にわたって住民たちが手作業で掘り続けたもので、神殿内部は、彫刻やモザイク画、ステンドグラスなどが施された美しい空間が広がっています。ダマヌールでの寺院のような位置づけであり、精神的なシンボルとも言えます。神殿の内部は、異なるテーマごとに部屋が分かれており、宇宙や自然、生命の神秘を表現して、瞑想や儀式、教育の場としても使われています。初めて見るとかなりアーティスティックで個性的な空間という印象を受けると思います。
住民たちは、有機農業やパーマカルチャーといった環境に優しい農業手法を実践し、地元の資源を活用して生活を支えています。また、再生可能エネルギーの使用にも力を入れており、風力、太陽光、水力などの自然エネルギーを積極的に導入しています。
ツリーネットワーク
ひとつ特徴的な取り組みを紹介しましょう。ダマヌールでは「ツリーネットワーク」と呼ばれるプロジェクトが進行中で、樹木とのコミュニケーションを通じて地球環境の調和を図ろうという試みをしています。これは単純な「森林保護活動」ではなく、樹木が意識を持つ生命存在として捉えて、人間と樹木が協力し合うことを目指す精神的な取り組みと言えます。樹木は地球の長い歴史を生き抜き、広範囲に伸ばした根や、菌類との共生関係を通じて情報を交換している存在であり、その意味でも人間より遥かに長い時間軸で地球と調和して、人間が失いつつある叡智を宿していると考えることができます。
具体的に何を行うかというと、まず特定の木に対して感謝の言葉を伝えることから始め、少しずつ言葉を超えた感覚的な交流をしていき、最終的には木からインスピレーションを受けとることを目的とします。ここで重要なのは、人間は自然界の上に立つ存在ではなく、自然の一部であり協力しあうことの意識を持って向き合うことです。このように植物と謙虚な気持ちで向き合い、自然との調和を図るという姿勢は自然栽培の理念とも通じるかもしれませんね。
自己の成長や自然との調和とは、決して難しい哲学や学問の中だけにあるものではありません。身近な自然から感じとる美しさや変化を見出す感性を日々の暮らしの中で意識したいですね。
■参考資料:
ダマヌール日本ホームページ他
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