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ライフジャーナル(大類久隆)

新しい潮流へ向けて

2025.01.01

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、昨年の大きな出来事からこれからの社会の変化について考えていきます。



明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
新たな年を迎えられたことを感謝したいと思います。

今年は大きな変動・変革の年になりそうです。世の中の動きが激しく、それに伴って今まで当たり前と思ってきた価値観や古い常識が、いよいよ通用しなくなる可能性を感じています。価値観の転換については、過去に何度かお伝えしてきたことですが、昨年は、そのきっかけとなる象徴的な出来事が続きました。

今回は、その出来事を読み解きながら、今後の世の中がどうなっていくかを、今年最初のご挨拶としてお伝えしたいと思います。もちろん皆さんにとって、あくまでも明るい未来に少しでも希望が持てるきっかけとなればと思います。


若年層の投票行動の変化


まず、昨年の大きな出来事と言えば、日本では、衆議院議員選挙がありましたが、与党が15年ぶりに過半数割れになりました。投票率が53.85%と戦後3番目に低かったため、過去の経験からすると投票率が低い場合は、与党が組織票に支えられて勝つケースが多かったのですが、今回の選挙では、それが完全に覆りました。

特に注目すべきだったのは、年齢別の比例区の投票先を見ると、30歳以下の若年層の多くが、国民民主党とれいわ新選組を支持していることが分かり、野党第一党の立憲民主党ではなかったことです。逆に60歳代以上の高齢者ほど。自民党と立憲民主党を支持する傾向が強かったことも分かりました。

これは何が起きたか推測すると、注目すべきは、選挙期間中に自民党の裏金問題を糾弾し続けた立憲民主党に対して、国民民主党とれいわ新選組は、党の政策を伝えることに集中していたことです。つまり、若年層の人たちは、自民党の問題点に注目するのではなく、政策を重視して投票していた可能性があります。これらの投票行動に違いが出たのは、若年層の人たちが、テレビや新聞などのオールドメディアではなく、YouTubeやXなどのSNSから積極的に情報を得ていたことに要因があると言われています。


SNS・小規模メディアの台頭


この出来事から見えてくるのは、今まで圧倒的に世論に影響力を持ってきたオールドメディアが、力を失って来ている現状です。特にデジタル世代と言われる若年層の多くの人たちにとっては、テレビや新聞などは、必要な情報を得る媒体ではないと認識している可能性があります。そして今後数年の間にこの現象はさらに顕著になり、投票行動において、いずれ完全に世代交代が起こることになるのではないかと感じています。もちろんSNSの情報すべてが正確なわけではなく、むしろその中から正確で有益な情報を読み取ることができている一定数の人たちが、今後政治的にも影響力を行使することになるのではないでしょうか。

実は、アメリカにおいても同じ現象が起きており、   11月にあった大統領選挙では、既存メディアの多くが民主党のハリス当選を予想しており、完全に民主党寄りの報道を続けてきましたが、投票が始まってみると共和党のトランプが圧勝という結果でした。アメリカでは、貧富の格差や移民による治安の問題などをはじめ、多くの社会問題が深刻な状況であったわけですが、国民として、多くの問題の解決をいい加減民主党には任せられないというのが回答だったのです。ここでも多くのオールドメディアが民主党に有利な情報や報道を続けたにも関わらず、トランプを支持した有権者は、小規模な独立系メディアやSNSを中心として情報を集めて判断していました。

このように日本でもアメリカでも既存のオールドメディアから、視聴者の多くが離れているか、限定的な利用に留めている現象があり、多くの有権者が、流れてくる情報を鵜吞みにせず、自ら考えて情報を選択していることになります。この傾向がとても印象的に感じたことです。


各国でのナショナリズムの再興


さらに政治思想的な部分に踏み込んでみれば、これは日本とアメリカに限った現象ではないのですが、多くの国で共通しているのは、以前よりも保守的思想やナショナリズムが評価されてきたことです。かつての表現で言えば保守派や右派であり、当然右派といえば、左派(リベラル)に対抗した思想や考え方を持つ人たちを指すことになるのですが、実はそう単純な話ではなくて、「保守」VS「グローバリズム≒リベラリズム」という構図になっていることです。

ここで言うグローバリズムとは、市場主義経済を何よりも優先して推進する考え方です。つまり、多国籍企業が国境を越えて経済活動を押し広めることや、その思想を善としている考え方そのものを言います。行き過ぎた市場主義経済によって、一部の大企業が利益を集中させるため、より人件費の低い国に製造拠点が移転することで、先進国の雇用が失われたり、国の文化の均一化が進み、特に発展途上国の地域独自の文化や生活様式を壊すということが起こりました。また、あらゆる国の市場を開放することに貿易協定などのルールで圧力をかけるため、国の産業や農業が圧迫されることになりました。さらに先進国で近年問題になっている、企業が安い人件費を求めるため移民の受け入れを積極的に求めることで、自国民との間で治安問題などの対立が起こっています。

このようにグローバリズムによる悪い側面が各国で表面化したことで、自国の経済や文化を守ろうという保守的な考え方が、対立軸として広まっているという状況です。


そしてもう一つの側面として、グローバリズムとリベラリズムがなぜ同じ括りの中にあるのかですが、リベラリズムとは、自由主義とも表現され経済的自由と民主的な制度を要求する思想や行動原理を指します。なので民主的ですべて平等であるという考え方とともに経済的にも国境を越えて、すべての国が自由な経済活動の最大化を求めることになります。もちろん考え方としてもっと複雑な背景があるのですが、リベラリズムとグローバリズムが、ある側面において親和性が高いとも言えます。そのために、グローバリズムがリベラリズムを都合よく利用していると見えることもあります。

アメリカの大統領になったトランプは、ナショナリズムの中でも特にリバタリアニズムという思想を重んじています。リバタリアン思想とは、個人の自由や自律を重視しながら経済活動も自由に行うという考え方であるため、国家が個人の経済活動に干渉することに反対し、徴兵制にも反対、徴税が私的財産への侵害とみなして、税負担の大きい福祉国家を否定します。このことから、民主党が進めるグローバリズムに基づくリベラルな政策にことごとく反対しているわけです。特に民主党を多くの多国籍企業が支援しており、大手メディアもここに属しているため、当初からトランプを変人や危険人物として報道して、事実を歪めてきたとも言われています。

これが、世界的に広がるグローバリズムに対してナショナリズムが再興している背景です。他の国でも同じようなグローバル化の弊害が出ていることから、各国でそれに対抗するように保守的な政党が支持される流れがあります。もちろん、各国でそれぞれ政治状況や背景が違うため、一概に単純な構図としては、捉えられないのですが、概ねこのような変化が起きています。


新たな潮流への過渡期


さて、ナショナリズムを政治的な大きな流れとして理解いただけたと思いますが、私はこの変化が次の時代の新たな潮流ということではなく、そこに至る変革の始まりと見ています。行き過ぎた市場主義経済が、すべての国民を豊かにすることはなく、リベラリズムと称して、大企業や一部の資本家によって全体主義化していくかのような世界に多くの人が危機を感じている状況があり、日本もその渦中にあります。

ここからは、あくまで推測ですが、これから起きることは、しばらくの間は前述した通りの対立軸で混乱が続くことになるでしょう。しかし、これが変革に至る産みの苦しみでもあります。やがて、今まで弱体化してきた社会の機能や、傷ついてきた自然の側面に人々が気がつきはじめて、少しずつ修復する試みが始まるでしょう。その過程で、社会に本当に必要とされる物事が見直されてくることで、大きく価値観の変化が起こると予想しています。

多くの人が、現在の世界をとても悲観的に見ていると思います。確かに終わりの見えない紛争や戦争が続いており、政治的、経済的に不安定な社会で苦しむ人が多く、また、深刻な自然環境の汚染が改善する見込みがないなど、問題を挙げればきりがないですが、それでも少しずつ、時には劇的に変化するのではないかと見ています。経済的な優位性や経済効率だけでルールが決まっていく社会から、本当に必要な知識や技術が求められ、より人間らしく生きるための本質的な議論が始まるでしょう。それにより分断された国家や社会から、統合された社会へ向けた話し合いや条件の調整が始まるかもしれません。

やがて、地域に根ざした文化や生活のあり方が見直されることで、地域経済やローカルコミュニティ の重要性が問われることになるでしょう。もちろん私たちが取り組んでいる農業や食や生活のあり方も大きく変わっていくことになるでしょう。農薬や肥料に頼る画一的な農業から、地域ごとの多様性のある持続可能な農業への移行が加速するでしょう。もちろん環境に対する意識は、気候変動による影響を考慮し、環境保全の必要性がより叫ばれ、地球規模で自然との調和を考えるきっかけになると思います。そのとき身近な自然環境の大切さ、また、自然の摂理に沿う生き方の大切さが問い直されることでしょう。


新年からかなり長く、しかも政治的な固い話しになってしまいましたが、世の中の動向を俯瞰的に見ていくと、少しずつ改善の兆しがあると感じています。かねてから伝えてきた通り、これから価値観と意識の転換が起きてくると信じています。まだしばらくの間は困難な状況は続き、混乱は避けられないとしても希望をもって進み続けたいと思います。

今年も皆さまにとって平和で幸せな年になることを心よりお祈り申し上げます。


■参考資料:
毎日新聞デジタル「朝日世論調査」


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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