ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、これからの理想とする生き方や社会のあり方を考察します。
表面的な情報に惑わされないこと
より本質的で持続可能な社会へ
早くも今年最後のジャーナルとなりました。今年も生きる上で役に立つ様々な情報を、私なりの視点でお届けしてきましたが、今回は私が理想とする生き方や社会のあり方を、今年のまとめとしてお伝えしたいと思います。
近年は、エコやSDGsという用語を当たり前に見かけるようになりましたが、表面的に使用されることも多く、ある意味使い古された感じもあります。例えば企業が打ち出しているSDGsの施策を見ると、企業のイメージ向上で留まっているものも多く見受けられます。これは何度かお伝えしてきたことですが、本来のエコロジーや持続可能な社会とは、表面的な情報や部分的な取り組みで留まるのではなく、もっと哲学的な背景を持った本質的な取り組みであるべきだと考えています。
例えば電気の無駄遣いをやめるとか、CO2の削減を意識する生活も無駄ではないのですが、より自然環境全体を見据えた活動が理想です。そこで、ひとつの考え方としてバイオリージョナリズム(Bioregionalism)や生命地域主義(Life-Place Ethic)といった、自然の摂理に沿った、地域に根ざしたアプローチに目を向けようという考え方を紹介します。これらの考え方は、単なる「環境にやさしい」などの行動を超えて、人間と自然の関係性を再構築して、生命の多様性や地域の特性を尊重する生活を提案しています。
まず、バイオリージョナリズムは、自然環境の生態系に基づいて地域社会を形成し、その地域に適した生活様式を構築するという考え方です。この思想は、単に人間の便宜のために引かれた国境や行政区画にとらわれず、地形、気候などの自然の様相を重視しています。これは、けっして小難しいことではなく、地元の自然環境と調和した生活を送り、その地域の生態系や資源を持続的に利用することを目指した生き方です。バイオリージョナリズムの哲学の背景は、自然主義的倫理に基づいていて、すべての生物は相互に関連し依存しているという考え方を中心に据えています。 地球の限られた資源を尊重し、自然のサイクルに合わせた社会システムを構築する必要があると考えられています。
また生命地域主義は、バイオリージョナリズムの原則をさらに発展させて、人間の存在を地域の生態系の一部として捉えています。生命は、特定の場所や環境と深く関係しており、その場所に適応した生活が重要であると説きます。生命地域主義の視点では、人間はただその場に住んでいるだけではなく、その場所と共生する存在であるという意識を持つべきだとしています。
これらの哲学的な視点は、グローバリゼーションによる画一的な消費文化とは対極にあり、地域の文化や知恵、自然との調和を尊重しています。ではバイオリージョナリズムや生命地域主義を実生活に取り入れるために、どのような方法があるでしょうか。
最初は、やはり食の地産地消という考え方でしょう。日本の身土不二とも考え方は同じだと思います。住んでいる地域で生産された食品を選び、地域の生態系に基づいた食生活を取り入れることは、自然との共生を実現する最もシンプルな方法です。輸送エネルギーを削減し、地域経済を活性化させる効果もあります。
次に太陽光や風力、小型水力など、その地域の特性に合った再生可能エネルギーを利用すること。これは、持続可能な社会を構築するための重要なステップです。エネルギーの供給と消費のバランスを意識しながら、地域社会の持続可能性を高める手助けとなります。
続いて自然素材を使った建築や、エネルギー効率の高い住居を設計すること。地域の気候や環境に適応した生活を可能にし、さら建てることでエネルギーの使用を抑えることができます。熱帯地域では自然通風を重視したデザインを取り入れることなども考えられます。
最後に地域コミュニティの強化が重要になります。個人の生活スタイルだけでなく、地域全体の連携も重要視して地域文化や資源を共有することは、持続可能な未来を築くための基盤になります。
今回は、表面的なエコ活動を超えて、より深い哲学的な背景に基づいた持続可能な生活スタイルを提案しました。少し古臭いくらい原則的で当たり前のことが書いてありますが、現代こそ哲学的な生き方が求められています。人間は自然の何かひとつ欠けても生きていくことができない、ということを肝に銘じて、どのように自然や地域と共生していくべきか、という根本的な問いかけを続けなければならないと思います。
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