ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回はこれからの生き方のヒントになるであろう、世界を代表するエコビレッジをご紹介します。
スコットランドを代表するエコビレッジ
人と精霊がともにある共同体
今回も世界を代表するエコビレッジを紹介したいと思いますが、恐らく世界で最も有名であり、この共同体を語らずしてエコビレッジは語れないというほどでしょう。エコビレッジに興味のある方の中には「フィンドホーン」という名前は聞いたことがある、という方もいるかもしれません。エコビレッジというよりむしろスピリチュアルな共同体としての印象が大きい場合もあるようです。
フィンドホーンの共同体は、1962年にアイリーン・キャディ、ピーター・キャディ夫妻、そしてドロシー・マクレーンの三人によって設立されました。当初、3人はスコットランド北部のモライ地方にあるフィンドホーン湾に近い海岸のトレーラーハウスに住んでいましたが、アイリーンが内なる声に導かれ、同時にドロシーの自然との驚異的なコミュニケーション能力により行動に移したことが始まりでした。
この辺りの経緯は、様々な書籍が出ているので参考にしていただきたいのですが、彼らは、そもそも海岸近くの砂地が多い痩せた土地であったその場所で、内なる声や自然との交流によって植物の奇跡的な側面を見ることになります。精霊の助言に従う中で、植物は厳然と自然の摂理に従って生きていること、野菜を育てる人間がすっかり感謝を忘れていることなどを知らされます。そして、さらに助言に従って土づくりを行い野菜を育てると、あり得ないほどに巨大で立派な野菜が採れるようになりました。やがてその噂を聞いた人々が見学に訪れることになり、この菜園が名所と言われるほどになります。その後、フィンドホーンはスピリチュアルな学びと環境保全を融合させた場所として成長を続け、エコビレッジという形でその取り組みが具体化されていきました。
1990年代に入ると、フィンドホーンは「エコビレッジ」としての道を本格的に歩み始めます。この時期、世界的に持続可能な生活やエコロジーに関する意識が高まっていたこともあり、フィンドホーンはその先駆けとして注目されるようになりました。エコビレッジとは、持続可能なコミュニティのモデルであり、エネルギー、食料、水の利用を最適化して、環境への負荷を最小限に抑えることを目指しています。コミュニティ内には風力発電機が設置されており、地域全体のエネルギーの約80%を再生可能エネルギーでまかなっています。また、自然素材を用いたエコハウスの建設が進められており、断熱性能やエネルギー効率を最大限に高めたパッシブハウスが多数建てられています。さらに、廃水の処理も自然浄化システムを活用し、徹底した環境配慮がなされています。
フィンドホーンのもう一つの重要な特徴は、自然と共生する暮らしを実践している点です。コミュニティ内では、有機農業が盛んに行われており、地域で消費される野菜や果物の多くは、自給自足の形で生産されています。また、食料廃棄物のリサイクルや堆肥化システムも整備され、持続可能な循環型のライフスタイルが実現されています。さらに、フィンドホーンでは森林再生プロジェクトも進められており、コミュニティの周辺には再植林された森林地帯が広がっています。
このようなコミュニティの中で生きるフィンドホーンの住民は、共同体としての強い意識を持ち、相互に支え合う関係を築いています。定期的に行われるワークショップや会議を通じて、環境問題や社会問題に対する意識を高め、解決策を共に模索する場を設けながら、内面的な成長やスピリチュアルな探求を重視して、瞑想や祈りの時間を日常生活に取り入れています。個人の精神的な成長とコミュニティ全体の調和が密接に関連していると考えられているため、スピリチュアルな活動と環境保全の取り組みが一体となっており、自然と人間の間にある深いつながりを探求することが重要視されています。
今回は、世界中の多くの人々にインスピレーションを与え続け、エコビレッジの手本になったと言えるフィンドホーンの紹介をしました。この共同体の成り立ちは、奇跡のような出来事の連続であり、にわかには信じ難い内容があるかもしれませんが、これほど自然との共生や植物との繋がりを重視して、いかに人の直感や感性が大切かを伝えている共同体は少ないでしう。自然栽培の理念と通ずる部分もあると感じます。自然の摂理に沿って生きるとは、私たちを取り巻くすべての環境や人との関係性を見直すことでもあり、これからの生き方のヒントになるのではないでしょうか。
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