ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、日本のプラスチックごみのリサイクルを考えます。
プラスチックリサイクル率の謎
途上国を埋めつくすプラスチックゴミ
少々刺激的なタイトルになっていますが、今回は日本の廃プラスチック(プラごみ)のリサイクルの謎と先進国による途上国への輸出の問題に焦点を当ててみます。
日本人にとって耳の痛い話かもしれませんが、リサイクルという名目で起きている実態を理解いただけると思います。
まず、日本が公表している廃プラスチックの総排出量とリサイクル率の内訳から解説します。この数字を理解するとこの後の話がスムーズに理解いただけると思います。2022年の廃プラスチックの総排出量は、827万トンになり、その内何かしら有効利用されたものが、87%にあたる717万トンとされています。この87%という有効利用率は大変高く優秀であると見えます。内訳を見るとマテリアルリサイクルが21%、ケミカルリサイクルが4%、サーマルリサイクルが62%になります。
ここでリサイクルの種類について説明します。マテリアルリサイクルは、物理的に洗浄と粉砕を行って再び原料として使用するリサイクル方法です。ケミカルリサイクルは、化学的な処理と分解することで油やガスとして再利用するか、コークス炉などで燃料として利用する方法のこと。そして、サーマルリサイクルは熱エネルギーとして回収すること、つまり焼却して熱源として利用するか、その熱を発電や温水などに利用するリサイクル方法です。最も主流になっているのはサーマルリサイクルなのですが、分別はするものの最終的にすべて焼却しています。
本来リサイクルと聞くと原料に戻してプラスチックとして再生しているイメージですが、純粋に再生しているのは、最初のマテリアルリサイクルのみで、主流となっているサーマルリサイクルは、熱源として利用しているとはいえ焼却処分と同じことです。日本では、EU諸国では認められていない熱源利用のサーマルリサイクルをリサイクルと定義しているため、見かけ上の数字が高くなっています。
さて、さらに原料として再生されているマテリアルリサイクルですが、実は約4分の3が輸出されています。2021年の記録では、マテリアルリサイクルされたのが178万トンで、その内131万トンが海外に輸出されています。この数字から計算すると、実際に国内で原料として再生利用されたのは47万トンしかありません。そう考えると、確実に国内で再生利用された47万トンから計算しても、717万トンのわずか6.6%に過ぎず、ケミカルリサイクルの4%を合せたとしても10.6%しかありません。
これが本当のリサイクル率と言っても良いでしょう。そして輸出された廃プラスチックは、2016年ごろをピークに150万トン以上を輸出しており、その約半分を中国が輸入していました。その後、2017年12月より輸入規制が始まり、中国への輸出はほぼなくなりましたが、ピーク時より減ったとはいえ、現在は、タイ、マレーシア、ベトナムを中心に輸出は続いています。
なぜ、廃プラスチックが海外に輸出されているのでしょうか?それはコストをかけずに処分できるからです。プラスチックをもう一度原料に戻して再利用するには、とても大きなエネルギーとコストがかかります。それを海外の業者に販売すれば安いコストで処分することができますが、果たして、すべてが再利用されているかというと、かなり疑わしい部分があります。国によって処理設備や工程が不十分であり、多くが埋め立てか不法投棄に近い形になっているという調査結果もあります。
日本の廃プラスチックの輸出量は世界で2番目に多いと言われています。このように先進国がコスト削減のためや処理しきれないゴミを途上国に押し付ける構図になっているのが実情です。近年は、アジアを中心にプラスチックゴミの海洋流出が問題になっていますが、少なからず、日本から輸出したゴミも含まれている可能性があります。
日本がリサイクルの定義を変えてまでも、高いリサイクル率にこだわるのはなぜなのか。ほとんどの人が、自分たちが捨てたプラスチックがしっかりリサイクルされ再生していると信じていると思いますが、実態はそうではないことを理解いただけたと思います。よく食糧自給率を上げようという議論がありますが、ゴミは減らす努力と正しい数字を基に、自国で処理できる仕組みの議論を行うことが先進国の責任であると思います。
■参考資料:
・一般社団法人プラスチック循環利用協会:資料一式
・環境省:廃プラスチックのリサイクル等に関する資料
・経済産業省:プラスチックを取り巻く国内外の状況
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