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ライフジャーナル(大類久隆)

松の木が伝えるメッセージ【前編】

2022.06.22

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、日本人にとっては身近な木「松の木」に注目してみました。


松の木が伝えるメッセージ【前編

いま世界中で起きている立ち枯れの本当の原因は!?
問題の本質を見極める

今回は、私が個人的に調べて来たことをお伝えしようと思いますが、まだすべてが明らかになった訳ではないので、この時点で可能な限りの情報とそこから導かれる本質的な問題をお伝えしたいと思います。

「松の立ち枯れ」というのを皆さん一度は聞いたことがあると思います。その名のとおり、松が倒れずに立ったまま枯れてしまう現象のことです。

数十年前から世界的に問題になり始めて現在でも進行中なのですが、かつては、酸性雨の影響であるという報道が多く、専門家の意見も大方同じであったと思います。もちろん被害を受けていたのは、松以外の樹木でもみられましたが、松が最も顕著に被害を受けていると言えます。そして、確かにPHの低い酸性雨が降っている地域ほど、立ち枯れの被害が多いのも事実です。

ただ、酸性雨という言葉を最近あまり聞かれることがなくなったのですが、被害が減ったのではなく、環境問題が多岐にわたり複雑化している状況で、原因を酸性雨だけに限定しなくなったためでしょう。

当初は酸性雨に直接当たることで、樹木が枯れるという見解が多かったのですが、そもそも酸性雨とは、人為的な化石燃料の燃焼や自然界の火山の噴火などで放出された二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)を起源とする酸性物質が多く混入している雨のことを指しており、その酸性雨が直接樹木を枯死させていると見られていました

さて、今回は松の木に限定して話を進めたいと思いますが、前述の通り松の立ち枯れは、長い間酸性雨が原因とされてきました。

しかし、近年になって直接的な原因の一つとして、松くい虫(マツノマダラカミキリ)が媒介となって運ぶ線虫(マツノザイセンチュウ)が、松の木の内部に卵を産みつけて道管を詰まらせて枯死するという仕組みが分かっています。
この線虫は元々日本に存在していない外来の微生物で、すでに昭和46年ごろには、その存在が明らかになっていましたが、ここ数年で北海道を除く全国各地で被害が拡大しています。

その対策として各地で行っているのが、薬剤散布による防除です。浸透性と残留性の極めて高いネオニコチノイド系の農薬をヘリコプターやドローンで空中散布することが多いのですが、その効果には疑問の声が挙がっています。

現在、松の立ち枯れの原因には、大気汚染説、酸性雨説、害虫説、菌類説があります。
結論から言うと、今挙げた説すべてが繋がっているという事です。

簡単に説明すると「大気汚染物質によって酸性雨になり、それが降ることで土壌の窒素過剰で富栄養化が起こり、本来菌類と共生関係にある松の木の根のバランスが崩れ、弱ることで虫害が起こる」という事です。

つまりそれぞれの説を別々に見ている限り対処療法で留まることになり、根本的な解決はできないと考えています。

実は、この問題の本質にあるのが、松の木は栄養分の少ない土地を好むということです。
それが酸性雨に含まれる窒素酸化物が、土壌に浸透して硝酸態窒素などに変化して窒素過剰になり、本来は栄養分の少ない土壌で菌根菌(きんこんきん)という菌との共生によって養分を得ていた松の木が、土と菌のバランスが崩れて、養分が得られず弱っていくという構図です

今世界中が人為的に放出した窒素化合物によって、生態系に大きな影響が出ています。

かつては、工場の排煙や車の排気ガスが主な原因と言われてきたのですが、近年はそれが多少改善されつつある中で、むしろ農業から放出される窒素化合物が問題になっています。世界中で使用される窒素肥料や動物性堆肥、または食品ロスから出るタンパク質が自然界に流出して、大気や土壌や河川を汚染しています。

松の立ち枯れが伝えようとしていることは、人類が豊かさと引き換えに長期にわたって放出してきた過剰な「窒素」によって生態系を壊してきた結果とも言えます。

> 続きはこちら 「松の木が伝えるメッセージ」【後編】


【参考資料】
『松枯れ白書』 松本文雄著 メタブレーン


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?


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