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ライフジャーナル(大類久隆)

混迷する社会の「見方」を変えよう【第1回】

2026.09.16

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、連載コラムとして、連日のように流れるネガティブなニュースや、日々感じる疑問をただ受け入れるのではなく、視点を変えることで見えてくる希望の兆しについて紐解いていきたいと思います。


 

混迷する社会の「見方」を変えよう【第1回】

 

ネガティブな情報の裏に見え隠れする

人類の成熟と希望の兆し

今回から全四回にわたり、「混迷する社会の『見方』を変えよう」というテーマで連載コラムをお届けします。連日流れるネガティブなニュースや、日々の生活で感じる漠然とした疑問。本連載では、それらをただ受け入れ、恐れるのではなく、少し視点を変えることで見えてくる「新しい豊かさへの希望の兆し」について、読者の皆さんと一緒に紐解いていきたいと思います。第一回のテーマは、私たちの毎日の暮らしに直結する「安さ」と「お金」の裏側についてです。

 

「安さ」の裏の見えない請求書

私たちがスーパーなどで目にする「安い農産物や商品」は、一般的には企業努力の結晶として評価されますが、その背景には、見えない誰か、あるいは未来の地球環境から前借りした「負債」が隠れていることもあります。

安さの背景には、農薬や化学肥料を用いた効率重視の生産や、生産地の人々に十分な対価が支払われない不平等な労働環境が関係しています。現在の市場価格の多くは、農薬などの化学物質で汚染された地下水を浄化するコスト、疲弊・劣化した土壌を回復させるコスト、そして破壊された生態系を取り戻すための膨大な時間と労力が反映されていません。労働に見合ったコストを支払うフェアトレードの認知も不十分です。

これらの隠れた代償は、現在既に気候変動や健康被害の形で影響が出始めており、私たちの子どもや孫の世代が、その代償を支払うことになります。農薬や化学肥料で土壌を酷使して収穫量を一時的に上げるのも、地球の裏側の人々に過酷な労働を強いるのも、すべては「未来からの前借り」です。つまり、今その安さのために、未来の世代にツケを回しているだけなのです。

経済の論理が最優先される社会では、どうしても「今、ここ」の利益が重視され、こうした遠い未来や見えない場所での代償は切り捨てられてしまいます。このシステムに違和感を抱き、その背景に目を向けることこそが、私たちがより良い未来へ向かうための第一歩なのです。

 

経済成長と「豊かさ」

では、地球の資源には限りがあるのに、なぜ社会はこのような無理を続けてしまうのでしょうか。答えはとてもシンプルです。私たちが、今の繁栄が進歩であると勘違いをして経済を無理やり膨らませてきたからです。経済のパイ(富)が魔法のように大きくなったわけではなく、未来に食べるはずだったパイを、今日みんなで奪い合って食べていたのです。未来の地球環境や、未来の子どもたちの時間を「前借り(搾取)」することで膨らみ続ける経済システムの中で、お金とは本当の価値を生み出しているのではなく、未来から奪った資源の負債として増殖し続けている存在と言えます。

今、世界中で起きている環境問題や過酷な労働などの人権問題は、未来の環境や、過酷な労働を強いられている人々に負担を押しつけることで成り立つ社会のあり方に、限界がきていることの表れなのかもしれません。

「奪う」から「育む」社会へ

「もう前借りできない」と聞くと、これからの社会は貧しく、不便なものになっていくように感じるかもしれません。しかしそれは、これまでとは異なる「豊かさ」のあり方を考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。これまでの社会は、石油などの資源を「燃焼」させ、自然や他者から「奪う」ことでエネルギーを得てきました。しかし、自然界に目を向ければ、豊かさのベースにあるのは収奪ではなく「調和と融合」です。

ここで、お金と自然界の循環の違いにも目を向けてみましょう。お金は決して腐ることがなく、際限なく自己増殖しようとする性質を持っています。環境との調和を無視して増殖し続けるシステムは自然の摂理に反しており、この世で際限なく増殖し続けられるのは、「お金(貨幣)とガン細胞」だけと言われています。一方で、自然界のあらゆる生命は「朽ちて、土に還り、次の命を育む」という循環の中にいます。

例えば「発酵」の世界を見てみましょう。発酵とは、微生物が環境と調和しながら、物質をより豊かで有益なものへと「育み、変化させる」循環のプロセスです。もし発酵の世界で、一部の微生物だけが奪い続ける力を持って暴走し増殖すると、やがて自らの力の影響で死滅して淘汰されることになるでしょう。それが自然の摂理だからです。人や社会が成熟し、「他者が活きる環境」を思いやりを持って作ることができれば、そのエネルギーは美しく循環し、無限の恵みをもたらしてくれるはずです。これからの社会システムは、間違いなくこの「発酵」の循環モデルへとシフトしていく。私はそう信じています。

お金や今の利益のために誰かから奪うのではなく、誰かのために自分の得意なことを提供し合うこと。そのとき生まれる「感謝」や「利他の心」が巡り巡って、社会全体を豊かにしていく。そんなあり方を、「発酵」に重ねて考えることもできるのではないでしょうか。これはたの理想論ではないと思います。それは生態系として最も合理的で持続可能なシステムに思えるからです。

目の前の利益だけを追い求め、未来から搾取し続ける終わりの見えない競争から降りて、共に「発酵」し合う成熟した社会に目を向けてみましょう。

次回(第二回)は、この「奪い合いから調和へ」という視点から、私たちにとって身近な「子育て」や「家族」のあり方について、お話ししたいと思います。(次号に続く)

 

参考資料:
・斎藤 幸平著「人新世の資本論」
・ジェイソン・ヒッケル著「資本主義の次に来る世界」
・デヴィッド・グレーバー著「負債論 貨幣と暴力の5000年」


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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