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ライフジャーナル(大類久隆)

デンマークの生き方に学ぶ 2

2024.09.02

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、以前お伝えした幸福度No.1のデンマークについて再び考察してみました。

前回の記事はこちら
デンマークの生き方に学ぶ

 


デンマークの生き方に学ぶ 2

デンマークの社会に根付いている生き方
高度な社会性の仕組みとは

幸福度No.1のデンマーク

以前、デンマークの代表的なエコビレッジを紹介しましたが、デンマークは先駆的なエコビレッジや共同体が数多く存在しています。なぜこれほど多くのエコビレッジが存在して、長期にわたり理想的な運営が続いているのでしょうか?今回は、デンマークの社会そのものに焦点を当てて、その社会に根付いている仕組みや生き方について考えてみたいと思います。

まず、デンマーク社会の特徴として挙げられるのは、高福祉高負担国家であることです。消費税にあたる付加価値税は25%であり、日本と比較しても国民負担率の高い国であることが分かります。一方で、国際幸福度調査で常に上位にランクインし、国際競争力においてもトップクラスの国でもあります。

なぜ社会的な満足と経済的な活動をともに高いレベルで維持できているのかですが、一般的な視点で言えば、まず一つに労働時間が平均週37時間と短いことが挙げられます。これは、日本の多くの企業で見られる長時間労働とは対照的と言えます。次に、失業した場合の失業保険や再就職支援が整っており、安心して新しい職を探すことができるという点です。また、教育もとても重要視していて、大学までの教育は無料で成人教育や職業訓練も充実しており、労働者は常にスキルアップを図ることができます。さらに、高い税率を背景にした充実した社会福祉制度を誇り、医療、介護、育児、教育など、あらゆる分野で手厚い支援が行われています。

このように一般的には高福祉国家であるがゆえの政策が並びますが、これだと経済的な競争力や幸福度の高い生き方のヒントとなる部分が見えてこないので、もう少し別の角度に焦点を当ててみます。



人に寄り添い、小さな幸せを大切に

デンマークには、デザインの力を活用して社会やビジネスの課題を解決することを目的としたデンマークデザインセンター(DDC)という国の機関が存在します。デザインと聞くと建築や家具などの意匠としてのデザインをイメージしますが、それとは異なり、「デザイン思考」というものを活用し、社会全体の幸福度と競争力の向上に貢献している機関です。「デザイン思考」とは、簡単に説明すると、あくまでも人間を中心に置いて、問題や課題の本質を理解して、問題解決に繋がる最終段階までの道すじをしっかりと描いて、サポートすることにあたります。なので、お役所的な、部分的・縦割り型の関わりではなく、最後まで総合的に人に寄り添った理想的な政策を行うことができます。そのため、無駄のない効率化した公共機関の運営や企業の支援を続けることができています。

そして、何よりデンマークには、文化の中心にあると言える「ヒュッゲ(hygge)」というデンマーク人が大切にしている生き方の価値観があります。「ヒュッゲ」とは健康的で居心地の良い空間や陽気な気分であること。またそのような生活全体を表す言葉です。一見すると捉えどころのない言葉ですが、家族や仲間と楽しく幸せな時間を過ごす、何気ない価値観が生活の中に根付いています。

またデンマーク人の気質を象徴する「ヤンテの掟」という言葉もあります。デンマーク出身の作家であるアクセル・サンデモーゼが書いた小説にある架空の十箇条の戒法で、徹底した平等意識や個人の目立つ行動を慎む言葉が並んでいます。スペースの都合で内容は省きますが、例えば「自分が我々より優れていると思ってはいけない」などの言葉が並びます。ある意味「出る杭は打たれる」と同じような保守的な社会のイメージを持つかもしれませんが、少し日本人と似た気質であるとも言えますね。



透明性の高さ「世界一」

このように北欧諸国の中でもひと際、平等性を重んじて企業活動でも社会全体の利益を優先する国です。でも、これほどの高負担の国で国民の不満がないのかと疑問が残る人もいるでしょう。恐らくその社会性を実現させている最も大きな理由は、徹底した透明性にあると言えます。政治的にも行政の取り組みにしても、その透明性の高さは、世界一と言われるデンマークです。それだけに国民からの信頼も厚く、政治と国民の健全な関係性が保たれています。

デンマークでも、このような高度な社会性に簡単に到達できた訳ではなく、限られた資源の中でいかに国と国民にとって利益になるか、何が理想かを求めた試行錯誤の結果であると言えます。近代日本が米国型の自由主義的な経済や社会を追随してきた結果、現在のような根深い社会問題を抱えていますが、根本から社会の仕組みを考え直すことも必要だと思っています。そういう意味でも、デンマークの国のあり方や生き方に学ぶところが大きいのではないでしょうか?


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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