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ライフジャーナル(大類久隆)

日本の漁業に未来はある?

2024.04.02

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、日本の漁業の問題について考えます。


日本の漁業に未来はある?

漁業大国ではなくなった日本
魚はどこに消えたのか?

激減し続ける漁獲量

今回は日本の漁業の問題を取り上げてみたいと思います。農業と同様に漁業の世界でも高齢化や後継者不足の問題が取り沙汰されていますが、実はそれよりも深刻な問題を抱えており、ほとんどその本質は報道されることもなく、国民には知る機会もないと言えます。

島国である日本は古くから漁業を重要な産業と位置付けてきて、世界的にみても漁獲量は常に上位にあり、日本人の重要なタンパク源を支えてきた産業です。

しかし、実態は非常に深刻な状況といえます。近年漁獲量は減り続けており、1980年代の1200万トンから、約三分の一に激減しています。では世界の水揚げ量も減少しているかというと、そうではなく逆に増加し続けています。世界銀行が2010年から2030年の海域別の水揚げ量を予測しており、世界全体では23.6%増加しているのに対して、日本の海域だけがマイナス9%となっています。つまりこの予測から、世界中で日本の漁業のみが衰退して将来性がないとみられています。

では、日本の漁獲量が激減した原因は何でしょう?一般的に報道される内容をここで確かめていきましょう。まず、海水温の上昇や潮の流れが変わることが原因とされる説について。もちろん温暖化による影響はゼロではありませんが、これは世界でも同じ条件のはずで、日本の海域だけが温暖化しているのではなく、理由にはならない事になります。次に他国の漁船が先回りして根こそぎ獲ってしまうという説です。これも可能性として排除できませんが、全体量からすると限定的で日本近海の漁獲高に与える影響は軽微と考えられます。続いてマイワシの水揚げが減ったからという説です。マイワシは他の主要な魚のエサになることから、マイワシが減ることで他の魚も減っているという理屈ですが、マイワシのみ2011年以降は急激に増えているので理由にはなりません。

その他にも様々な要因が挙げられており、もちろんそれらの影響がないとは言えませんが、問題の本質ではないと考えます。

野放しだった日本の漁業

実は、日本の漁獲量がここまで減り続けている本当の原因は、「乱獲」にあるという説が最も有力です。漁業が盛んな他の国々と比較すると、日本の漁業政策の無策が浮き彫りになってきます。日本で
は特にマグロやイカなど高付加価値な魚介類について制限なく漁獲が行われています。例えばノルウェーのサバやニシンなどの漁業を行う巻き網船は、科学的根拠に基づいた漁獲枠が、魚種と漁船ごとに割り振られています。一方で日本は漁獲枠が定められていないため、獲り放題になり小さな魚まで容赦なく獲ってしまいます。そうすることで魚は減り続け、さらに無理な漁を行うという悪循環が起こっています。漁業者としても無理はしたくないが、生活のためにはそれを止められない事情があるという訳です。

ノルウェーの場合は、国が漁業を成長産業と位置付けており、漁業者の保護もしっかりと行っているため、一般のサラリーマンより高収入を得て生活ができる仕組みができており、大型の巻き網船などは、船員に個室があるなど客船並みの設備が整っています。また欧州(EU)や米国などでも、漁業資源の管理において科学的な根拠に基づいた漁獲規制や漁獲削減の方針が積極的に採用されています。

一方日本では、ルールがないわけではなかったのですが、それは漁獲時期についての規制であって、 乱獲問題や漁業資源の持続可能な管理からは程遠い状況にありました。そこで2020年より70年ぶりに漁業法の改正が行われ、ようやく日本でも本格的な持続可能な漁業へ転換の兆しが見えてきました。

 

持続可能な漁業を目指そう

先に述べた通り、日本はかつて世界でも有数の漁業大国であり、漁場に恵まれ世界最大の漁獲量を誇る国でした。しかし、「資源の保護」や「持続可能な漁業」という観点が抜け落ちてきたため、漁獲量は右肩下がりで一部の魚介類は深刻な状況に陥っています。今まで日本の漁獲量が激減したのは、気候変動の影響や他国へ責任転嫁するような意見も多く、専門家でさえそれを信じてきたという状態です。

海は当然ながら世界中で繋がっており、海の資源は世界の共通資源として考える必要があります。漁業国としての責任を果たす意味でも、漁業者の保護や地域コミュニティとの協力関係を作り、持続可能な漁業を進めて欲しいと思います。もちろんこれは漁業だけに限った話ではなく、農業でも同じことが言えます。漁業でも農業でも持続可能という視点に立った国の積極的政策が必要ということですね。

 

■参考資料:
 片野 歩「魚が消えていく本当の理由」ブログ資料一式
 水産庁 「水産白書」資料一式

 


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?


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