ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は前回の続編として、ニジェールの軍事クーデターが起きた背景を踏まえて、もう一度、西アフリカで何が起きているのかを書いてみます。
新植民地支配からの解放
今わたしたちができること
前回のコラムを書いた直後に、西アフリカのニジェールで軍事クーデターが起こりました。このクーデターはまさにコラムで書いた新植民地主義とそれを国内で助長してきた勢力に対する抵抗といって良いでしょう。
ニジェールは西アフリカに位置しており、1960年に宗主国のフランスから共和国として独立しています。しかし、独立後から一党制を強硬して他党を排除し、あくまでも親仏的な政権が続きました。その後も度重なるクーデターが起こっており、独立後も五回もの軍事クーデターが起きています。
なぜ、これほどまで不安定な状況が続くのでしょうか?それは、民主的な選挙によって選ばれた政権であったとしても、政権内に必ず新植民地主義を継続する親仏的な協力者がいるためです。その人物はフランスからある程度の立場が約束されており、民主的な政権運営でもフランスに有利になる働きかけを行っているため、国内が一向に好転しない状況が続いてしまっています。これが軍部とのあいだに対立が起きていた原因ではないかと考えます。しかし、これはニジェールに限ったことではなく、旧植民地の国々において広く起きている宗主国による政治的コントロールなのです。
前回も書いた通り、ニジェールも例外ではなく独立後通貨の発行権を与えられず、あまりにも不当な経済的搾取が続いています。特にウランがニジェールで最大の輸出品になっており、ウランの関連産業が全雇用の20%を占め、総輸出額の45.6%に上っています。
EUが輸入している24%がニジェール産のウランであり、特にフランスは電力供給の70%を原子力に頼っていることから、ニジェール産ウランの採掘権にも大きな影響力を持っています。経済があまりにウランの輸出に依存しているため、ウランの市場価格により経済が大きな影響を受けてしまうことがあり、1999年末には国家が事実上の破産に陥っています。このような背景もあり、長年のあいだ苦しめられてきた国民の、フランスや政権に対する不信感が爆発した結果と言えます。
もちろん、政治的にもっと複雑な背景もありますが、旧宗主国に対して反旗を翻したことで、EUや米国、また周辺の親仏的な諸国からの猛烈な圧力は避けられない状況です。ニジェールが西アフリカの中でも孤立を防ぐための命がけの決断が続いていると言えます。
さて、それに比較して日本はとても平和かもしれません。日々、死と隣り合わせの環境ではないし、クーデターが起きる可能性もありません。どうしてもこのような出来事は、テレビのニュースで語られているだけの遠い国の話に感じやすいですし、確かに日本は直接の当事者ではありません。しかし日本の電力会社が共同でフランス企業に協力して、ウラン採掘事業に出資をしており、少なからず日本の原発の燃料になっていた事実があり、実は他人事ではありません。
本来ニジェールは資源が豊かであり、ウランだけではなく石油も金も豊富にある国なのです。それにも関わらず世界で最も貧しい国と言われていることが、何を物語っているかです。私たちが意識しなければならないことは、まずその事実を知ることです。
ここで言いたい事はフランスを糾弾することではありません。歴史上多くの先進国が発展途上国の人々を筆舌に尽くし難い苦しみに追い込んできた、あらゆる仕組みを転換すべき時ということです。そして私たちにできる事は、少しでもその国の人々の生き方を知り、歴史や文化を知り、その地域に合った繁栄のあり方を一緒に考えることです。
『絶対に必要なものは多くはない。恐らく、変わらずに輝き続けるのは、命への愛惜と自然に対する謙虚さである。その思いを留める限り、恐れるものは何もないと考えている』
――アフガニスタンで凶弾に倒れた
中村哲医師の言葉
【参考資料】
『ニジェール』『2023年ニジェールクーデター』 ウィキペディア
『EU最大の原発ウラン供給元フランス採掘にクーデターが暗雲』 産経ニュース
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