ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、新植民地主義の弊害と新たな地域主義の時代について考察してみました。
新植民地主義の弊害
新たな地域主義の時代へ
先日、フランスでアフリカ系の一七歳の少年が警察に射殺されたことで、フランス国内で暴動が起きました。きっかけは、乗用車を運転していた北アフリカ系の少年が、交通検問を拒否して走り去ろうとしたところ警察が発砲して少年が死亡したためでした。この抗議活動で数千人を超える逮捕者が出ています。その多くが移民の二世や三世の若い世代が中心であり、抗議活動が過激化して商店の略奪や破壊行為が広がっています。
この出来事には、様々な背景がありますが、注目すべきは、抗議活動に参加する多くの人が、都心部ではなく郊外に住む人々であることです。近年のフランスでは、アフリカを始めとした移民の多くが郊外に住み、過去にも度々警察との衝突が起きています。原因として貧富の格差の問題があり、長年の国家に対する不満が爆発したと言えるでしょう。しかし本質的にはもっと根の深い問題があります。その一つにフランスが積極的に行っている移民政策があります。
フランスは近年労働者不足の解消のため、積極的に移民の受け入れをしてきました。発展途上国からの移民の受け入れには、確かに人道的な意味合いもありますが、移民として受け入れている半分近くは、かつてフランスが植民地にしていたアフリカの国々の人たちです。もちろん現代に植民地はありませんので、独立した国々の人たちが仕事を求めて来ていることになります。ところが、旧植民地の国々がどうなっているかというと、新植民地主義と言われる新たな搾取の関係性が続いています。
フランスのアフリカにおける旧植民地の国々には、北部、西部アフリカを中心とした多くの国があり、現在その国々との関係性は、既にすべての国々が脱植民地化しており、表向きは独立した国家と認められています。しかし、元宗主国の多国籍企業による資源の搾取が続き、通貨発行権を与えずCFA(アフリカ植民地フラン)を強制しているのが現状です。通貨発行権を与えないということは、フランスが完全にその国の経済をコントロールすることになります。通貨の交換率が極端に安く抑えられており、たとえ輸出して稼いだ外貨であっても、五〇%をフランス国庫に預託する必要があり、アフリカ各国の経済活動から年間五千億ドル以上の資金がフランスに流れています。したがって自国の産業も経済も育たず、すべての人の生きる機会を奪うことになっています。
新植民地主義とは、このような経済的搾取によって植民地時代と変わらず、間接的にコントロールしていることです。これがアフリカから多くの移民が発生している元凶であり、いかにフランスの人道的措置として行っている移民政策が、いびつな構図の中にあるかが分かります。
もちろん、これはフランスに限ったことではなく、同じように旧植民地国に対して同様に経済的搾取をしている事例は多くあります。これが世界中で経済格差が起きている理由の一つです。
しかし、この構造がいま変わろうとしています。宗主国に通貨を押し付けられ、自由な経済活動もままならない国々が、その関係性を断ち切ろうとしています。原料や生産物の輸出を他の支援する国に別の通貨で取り引きを行い、また西アフリカの八カ国が加盟する西アフリカ経済通貨同盟が、CFAから新たな共通通貨ECOに移行することになり、五〇%の預託金の条件も撤廃されました。これにより、西アフリカ諸国が経済的自立を果たすことになり、政治的な自由度も増すことになるでしょう。
いま世界のパワーバランスが変わろうとしています。まだまだ理想的な状況には程遠いと言えますが、少しずつ改善の兆しが見えています。世界中の国々がそれぞれの自立した経済活動や政治活動を行い、平和的に他の国と対等な関係を築けることが大切です。そのためにも、これからは国同士の支援関係だけでなく、個人が海外のある地域や団体を直接支援できるような仕組みが必要です。国家の枠組みを超えて、国境に囚われない地域単位の気候や文化や民族の形に合った地域主義の取り組みが、必ず必要になると信じています。
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