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ハーモニックライフ（調和する生き方）という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類（おおるい）が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、いま広がりつつある「放射線育種米」について考察してみました。
放射線育種米が主力品種になる？
逆行する汚泥肥料の広がり
最近気になる情報が二つ入ってきたので、解説してみたいと思います。
まず題名にある「放射線育種」。作物に放射線を照射して一部の遺伝子を破壊することで、特定の性質を改変する行為です。「それは遺伝子組み換えでは？」と思われるかも知れませんが、遺伝子を組み換えたのではなく、単純に遺伝子を改変した品種改良と言えます。
放射線を利用して突然変異を起こす技術はすでに六〇年の歴史があり、導入された背景には原発と切り離せない事情があります。戦後、日本が原子力発電を導入するために核の平和利用を謳うキャンペーンを行いました。その中の一つに米国で行われていた、軍事的な目的の放射線を照射し、動植物への影響を調べる「ガンマ―フィールド」という実験施設を、植物の品種改良のために転用したものです。
日本の「ガンマ―フィールド」は茨城県常陸大宮市に存在しますが、半径100mの円形圃場の中心にガンマ線源の照射塔があり、植物の放射線育種を行う施設としては世界最大の規模でした。ところが最近、この屋外施設の利用を終了するという情報が出ていました。終了という言葉の使い方から、放射線育種の役割や時代が終わったという意味にも聞こえます。施設自体が六〇年経ち老朽化したという理由も考えられますが、最近はゲノム編集など高精度な遺伝子改変技術が進み、放射線育種では効率が悪く維持コストも高いことから終了となったのではないかと予想します。
放射線育種は、作物に変化が出て初めて何が起きたか分かるという精度で、ある意味当てずっぽうな方法であり、意図しない悪影響が出る可能性もありました。
放射線育種された作物は、米、酒米、大豆、果樹、野菜、観賞用の花や、発酵醸造に関わる菌など多岐にわたります。使用される放射線はガンマ線が多くを占め、一部イオンビームやX線の使用もあります。すでに放射線育種された作物の多くが栽培され流通しています。
そして、もう一つの情報が、その放射線育種された米が、少なくとも秋田県では二〇二五年から、兵庫県でもほぼ確定の方向で主力品種として栽培されることになったというニュースです。この米の特徴は、稲の遺伝子の一部を破壊してカドミウムの吸収をしにくくしている点です。主力品種ということは、秋田県で言えば「あきたこまち」であり全体の七割を超えます。これを放射線育種米に切り替えるということです。
この品種が導入される理由として、日本では特定の地域でカドミウムの汚染が認められていることが関係しています。原因は鉱山から出る鉱水や工場排水が、水田などに混入することで起こるのですが、かつてイタイイタイ病の原因となったのもカドミウムです。しかし自然環境中にはどこにでも存在している元素で、米以外の作物や魚介類にも微量に含まれています。現在は鉱水も工場排水も厳しい安全基準があり、まして農業用水に混入することはほとんど考えられません。では、なぜ今になってカドミウム汚染を重要視しているのでしょうか。
実は輸入肥料が高騰している影響で、最近は下水処理場で出た汚泥を肥料にする取り組みを国が進めています。すでに各地で販売されており自治体によっては無料で配布するところもあるようです。この汚泥肥料にはカドミウムなど重金属が高い濃度で含まれことがあります。もちろん肥料として販売するには一定の基準がありますが、それでも継続して食べる主食に低レベルでも含まれるのは好ましくありません。恐らくそこで、放射線育種米の導入に踏み切ったのではないでしょうか。
今後二つの県以外にも全国に広がる可能性があります。表示上の名称は「あきたこまち」や「コシヒカリ」のままになり、消費者には区別がつきません。
そもそも汚泥には重金属以外に化学物質の混入も多く、その対策がされていないことや肥料に合わせて米の主力品種を変えてしまうのは、とても怖い発想だと感じます。国として食の安全性や有機栽培を広げることを掲げながら、逆行する事態ではないでしょうか。あらためて農薬や肥料に頼らない農業の重要性を訴えていきたいと思います。
【参考資料】
『食からの情報民主化プロジェクト』 印鑰 智哉（いんやく ともや）
大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……？
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