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ライフジャーナル(大類久隆)

本当のエコロジーとは【後編】

2023.05.01

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、現代のエコロジーの抱える矛盾と疑問点について考察してみました。

> 前編はこちら 「本当のエコロジーとは」【前編】


本当のエコロジーとは 【後編】

環境対策の矛盾と忘れてはいけない大切なこと
先人たちの哲学に学ぼう

前編では、現代のエコロジーが企業の営利活動の範疇に留まっており、部分的な視点で見ればその活動にも意味はあると思いますが、永続的な視点で見ると疑問が残ると書きました。では、本当のエコロジーとは何でしょうか?本来の環境保護とはどうあるべきかを後編ではお伝えしたいと思います。

現代ではすっかり馴染みある言葉として当たり前に使用されるエコロジーという言葉は、もともと生物学の一分野である「生態学」を指していましたが、19世紀末より、工業化する社会に対して、環境にもっと配慮しようという「活動を表す言葉」として広がりました。その後、1962年にレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が出版され、明確な「エコロジー運動」として認識されるようになり、さらに国連による人間環境宣言(ストックホルム宣言)がきっかけで活動が本格化し、世界に広がっていきました。しかし、当時のエコロジー運動の中心は、公害や農薬に反対するという要素が強く、企業や国の方針に対する社会運動としての側面が強かったようです。

このような経緯から世界規模で環境問題が議論されるようになったのですが、あくまでも「人間が経済活動を行う中で、いかに経済発展を止めずに環境保護と両立できるか」に焦点が当たっており、現在は議論や運動の範囲が広がったとはいえ方向性は変わらず、以前より経済活動色が濃くなっているかもしれません。

経済活動と両立させる環境保護運動に対して、1973年にノルウェーの哲学者アルネ・ネスが提唱した「ディープエコロジー」という概念があります。従来の環境保護運動は人間の利益が中心ですが、この概念は環境保護自体が目的であり、人間の利益は結果にすぎないという考え方です。つまり、1970年代以降の環境保護運動の多くが「産業面の環境対策活動」中心になっているため、生活者の生き方にまで目を向けることがなく、同時に人間以外の生命に対する尊重や配慮が欠けており、根本的な解決にならないと主張しています。

ネスは、ディープエコロジーを通して人間が自然界における一員であることを認め、自然界全体の調和やバランスを重視する必要があると主張しています。一方で現代の環境保護運動を「シャロ―(浅い)エコロジー」と呼び、人間中心的な視点から環境問題を解決しようとする考え方であると定義しています。とても哲学的な考え方ではありますが、人間も自然の一部であると考えて、すべての生命が平等であると説くことは、人間がもっと謙虚になる必要性を感じます。

実はこの当時、ディープエコロジーと同じような思想が多く存在していました。多少の違いこそあれ、思想や哲学を通して自然と人間の関係性がどうあるべきかを定義しようとしていました。ところが、前述した通り現代になるにつれ、それらの思想や哲学は部分的に切り取られ、都合の良い考え方として解釈されてきました。それぞれの運動には意味があるかもしれませんが、結果的に企業の経済活動に都合の良いルールのようになっています。

大自然にとってその行為は本当にバランスの取れたものでしょうか?人間のみの都合で考えてはいないでしょうか?もちろん人間が生きる上で経済活動をすべて否定する訳ではありません。しかし、もっと広い視野と深い思慮に基づいて行動する必要があります。概念だけでは、人間は生きてはいけないという声もあるでしょうが、現代ほど思想や哲学が必要な時代はないと思っています。

人間が地球環境に与える影響はとてつもなく大きなものです。それだけに我々の選択が自然界の仕組みにどのような影響を及ぼすかを慎重に判断しなければなりません。そして私たちは、自然栽培の理念も含めて、いかに先人たちの残した優れた思想から学んで行動するかが問われています。

『場所を生きるということは、その土地を知り、自然環境を知り、生態系の中にいる存在として自分を見つめることである』

―― ゲイリー・スナイダー

> 前編はこちら 「本当のエコロジーとは」【前編】


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?


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