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ライフジャーナル(大類久隆)

男性優位社会の終わり

2022.12.05

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、移りゆく社会性について見ていきます。


男性優位社会の終わり

国と経済と戦争が繋がる社会
所有から共有の世界へ

近い将来に世の中の価値観が大きく変わる可能性があることを何度かお伝えしてきましたが、今回は現代の男性優位社会になり過ぎてしまったことの社会の特徴と弊害、またそこから変わりつつある世界を描いてみます。

未開文明社会の物々交換が不便なことから貨幣が発明され、現代の経済に繋がったとする経済学の定説があります。しかし文化人類学者のデヴィッド・グレーバーが、過去そのような理由で貨幣が始まったとする記録は一切ないとする反論がありました。実はこれが現代経済学にとっては衝撃的な内容でした。つまり古代人を始めとした未開文明社会では、物の価値を交換するという概念がなく、贈与として与えるか印を残して交換するという文化であったというのです。

これがなぜ衝撃的なのかというと、人はそもそも自然から得たものを所有物ではなく共有物と捉えているため、必要とする人がいれば分け与えるのが当たり前であった、という説だからです。そうすると、現代経済学が唱える貨幣制度が必要に応じて生まれてきたという前提が崩れ、貨幣制度に基づく経済の仕組みが、いかにも人間性に合っているかのような理論が否定されたのです。

なぜこのような話題を書いたのかというと、国家という概念や経済の仕組みや戦争すらも歴史的にみて、男性優位社会になると同時にこれらが明確な形で現れると考えるからです。例えば古代のメソポタミア文明で紀元前3000年ごろの文章には、多くの女性統治者の名前が記載されていて、医者や公務員などの重要な地位を多くの女性が占めていました。

しかし、その後数千年の間に女性の社会的地位が崩壊していきます。それと同時に明らかな男性優位の社会が現れ、国家という枠組みが明確になり、市場経済が活発になり、戦争が増えたとも言えます。もちろんすべての古代国家がそうであった訳ではないのですが、強化される順序は別として、国と経済と戦争がお互いに協調し増強し合う傾向が見えてきます。

日本でも明治時代から「家制度」が民法で規定され、庶民の間にも「家父長制」が定着していきました。この時から「家」という概念ができたわけですが、家とは「戸主」とその他の「家族」によって構成され、戸籍によって管理されることになります。戸主は基本的に男性であり家のすべての権限を与えられて、その後も男子が継いでいくという流れができます。

現代ではかなり緩和されたとはいえ、未だに慣習として家族制度が深く根付いていますが、家族制度とは、明治時代以前から武家や公家などの間で権力や財産を継続するために形作られた制度でもあり、庶民の間にも男系や家柄を重視した制度が採り入れられたということです。では、これらの家制度や家族制度を国民の間に拡大させた理由はなぜなのでしょうか?

それは「家」を「国家」と同じように見立てた制度であり、強い国家を作るためにその縮図である家も強固にしようという目的だと考えます。「男は外で戦い女は家を守るもの」という考え方もここから始まったと言えます。このような流れを歴史的に見ると明らかに宗教の影響も大きく、明治時代以降の日本は大陸からの儒教や西欧の宗教と政治体制の影響を受けています。多くの宗教が女性を男性より劣った存在として描いており、なぜそうなったのかは以前も書きましたが、権力側が女性的な性質や考え方と常に対立していたことが挙げられます。

現代社会が、とかく宗教や政治思想や国民性の違いで争っていると思われ、市場主義経済の暴走によって起きた社会の歪みの問題の本質も、実は社会が男性優位に傾き過ぎた結果ではないかと考えています。

しかし、いよいよその社会の限界が見えてきています。あらゆる仕組みが機能不全を起こして目先だけの改善では、解決できないことが溢れています。そろそろ問題の本質に気がつく必要があります。男性性優位の「所有と競争の社会」から、女性性優位の「共有と分かち合いの社会」への転換が始まろうとしているということです。


【参考資料】
『負債論 貨幣と暴力の5000年』 デヴィッド・グレーバー著 以文社


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?


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