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ライフジャーナル(大類久隆)

原発エレジー 原発事業に送る哀歌【前編】

2018.09.21

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、「原子力発電」がテーマです。
以前メールマガジンで「日米原子力協定」が30年の期限を迎え、2018年7月に自動延長になるであろうという内容を取り上げましたが、予想通り延長になりました。
今回はもう一度この内容に触れてみたいと思います。


日本が原発を止めない本当の理由

さて、この日米原子力協定について簡単に説明します。

日米原子力協定は、戦後間もなくの1950年から交渉が始まり三度に渡って内容が更新され、最終的に1988年に締結された日本と米国との二国間協定です。
本来、戦勝国にしか認めていない核物質の実験や取り扱いを、平和利用の目的においてのみ合意しているという内容です。というより、米国から許可を得ていると言ったほうが良いでしょう。ちなみにこの協定は、日本の国会で一度も議論されることなく決まった協定です。

この交渉当時から日本は、核兵器の技術や知識は保持しておきたいという隠れた意図がありました。そのため、すぐ核兵器に転用できるプルトニウムの保有がなんとしても必要だった訳です。もちろんその意図を表沙汰にすることはできないので、プルトニウムはあくまでも原子力発電所に再利用するという目的で保有しました。

このように日米原子力協定があるため、日本は原子力発電所の燃料になるウランの濃縮やプルトニウムの取り出しという行為ができているのです。しかし、あくまでも平和利用されることが前提なので、無意味にプルトニウムを保有することはできません。それを解決するために考えられたのが「核燃料サイクル」といって一度使用した核燃料を再処理してウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料として再利用することなのです。

ところが、その核燃料サイクルで重要な役割を担うはずであった、青森県六ケ所村の再処理施設は様々なトラブルでまともに稼働することができず、プルトニウムを永遠にリサイクル出来ると謳われた、福井県敦賀市にある高速増殖炉もんじゅは廃炉が決定したため、事実上、核燃料サイクルは破綻している状態です。

さて、日本が保有しているプルトニウムは約47トンあります。そのうち37トンは海外に保管して国内には10トンあります。そもそも日本は敗戦国にも関わらず、これだけ大量のプルトニウムの保有や実験を米国に黙認されてきたのですが、核保有国以外の国でここまでのプルトニウムを保有しているのは日本だけです。当然諸外国から見ればプルトニウム大国であり、核兵器製造の技術も保持していると見られていることは間違いありません。

それでも米国の議会では、核兵器の不拡散を守るためにこれを危険視する声もありながら、すべて黙認してきた背景があります。それは何故か。それは「米国の核戦略上の日本の位置付け」と「日本の核兵器保有の意図」にあります。

ここではっきり書きますが、米国は日米原子力協定を締結して平和利用を目的とした原子力の研究を日本に認めてきましたが、これは核兵器開発と核戦略の一翼を担わせるためであり、そもそも平和利用は存在していません。

思惑が一致した両国政府は、それを実現するためにあらゆる手段を講じます。米国ではレーガン政権当時、最高機密とされた核兵器製造の最も重要なプルトニウムの濃縮技術や、増殖炉の研究成果を秘密裏に日本の技術者に引き渡した可能性があります。これは条約や法律で禁止された行為にも関わらず黙認されてきました。

一方日本政府は、国民の核アレルギーを取り除くべく、徹底した原子力の平和利用を喧伝しました。大手新聞を通じて「資源の乏しい日本には原子力が必要である」と繰り返すことで、日本国民はあっさりとそれを受け入れてしまうことになります。

特に米国は1979年のスリーマイル島原子力発電所事故以来、政策上事業は大幅に縮小していきます。しかし核兵器に必要なウランやプルトニウムの濃縮工場を稼働させておく必要があります。将来的に米国でその技術や製造を継続できなくなることも考えて、日本に必要な情報や技術を積極的に流して後押ししました。そして日本の原子力発電所でウランを使用させて、濃縮技術も温存するという核戦略上の計画があったのではないかと考えています。

つまり、日本の原子力発電事業とは最初から平和利用などの目的は一切なく、あくまでも米国の核戦略上の流れの中に組み込まれていたもので、これが電力会社を隠れみのにして現在まで行われてきた原子力発電事業の本質です。

さらに米国で原子力発電事業が縮小したとはいえ、重要な技術は特許という形で温存しているため、原子力発電所を建設するたびに米国の企業には莫大な特許料が入ります。たとえ日本企業が原子力発電所を建設して保守点検業務を行っていたとしても、特許料収入が得られる仕組みになっています。だから米国の核戦略上重要と認められた国に、日本が原子力発電事業を輸出するセールスマンとなり、売り込む流れができているということです。

ここまで書いてきた内容から日本が原子力発電を止めない本質的な理由がお分かりいただけたと思います。

それでも必ず原発はなくなる!

ここからは、「それでも必ず原発は止まる」理由について進めていきます。

その前に、原子力発電所にまつわる不可解な状況がたくさんあるので挙げておきます。こうしたことからも原子力発電事業の継続が困難になるひとつの要因となる可能性がありますので、ぜひ理解していただければと思います。

まず原子力発電所がないと電力が足りなくなるという根拠は、既に完全に崩れています。あえてここで書く必要もないと思います。

原子力発電所は、一度稼働すると出力を調整することができません。つまりつくり出される電力の最大量を吐き出し続けることになるため、どうしても電力が余ります。そのため、その余った電力のはけ口として「揚水ダム」を建設し、「オール電化住宅」の普及などを積極的にすすめてきたわけです。

揚水ダムとは、正確には「揚水式発電所」のことをいいます。高地と低地の両方にダムをつくり、高地から低地に水を流して水力発電を行います。原子力発電所が24時間フル稼働すると、日中消費する電力を発電することができても、使用量が減る夜間は電力が余ることになります。そのため夜間に余った電力で、低地にあるダム湖の水をポンプで引き揚げて高地のダム湖に送ります。ポンプで水を揚げるときに電力を使用するので、発電する電力を差し引くと約30%の電力をここで消費することになります。というより捨てているということになります。

日本全国にこの揚水ダムがあり、原子力発電所とセットになっています。

オール電化住宅は上記と同じように、夜間の余った電力を安くして、その電力を活用しようというシステムです。従来住宅で使用するエネルギーは電力の他にはガスがありますが、そのガスを使用していた部分を電力に置き換えて、住宅全体の電力使用量を増やす目的で開発されたものです。オール電化住宅は一時期テレビでも盛んに宣伝されていましたが、その一方では節電のコマーシャルが同時に流れており、とても矛盾した状況が続いていました。福島第一原発事故のあと、視聴者からクレームがあったのか大幅に自粛することになったようです。

次回、後編では、各国の原子力発電事業の動向についてお伝えしたいと思います。

> 続きはこちら 「原発エレジー 原発事業に多くる哀歌」【後編】


【参考資料】
『United States Circumvented Laws To Help Japan Accumulate Tons of Plutonium』
 国家安全保障通信社 記事はこちら > DC BUREAU
『核を求めた日本』 外務省 報道に関する調査資料一式
『小出裕章』 講演録一式
『東芝を沈めた原発事業大誤算』 プレジデントオンライン 大前 研一 著
『原発のコスト』 大島 堅一著 岩波書店
『河野 太郎』 公式サイト
『日米原子力協定』 1988年版


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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