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イタリア・カラブリア州 ジョヴァンニ・ガッティさん「信念が溶け込む金緑色のオイル」

2018.11.13

ジョヴァンニ・ガッティさん…1964年生まれ。奥さまの丸山 みほさん、11歳の息子さんの3人家族。奥さまとの出会いは、みほさんが友人とガッティ家を訪ねたのがきっかけ。現在みほさんはオイルの日本への販売協力を行っている。食卓ではオリーブオイルをそのまま使うほかに、炒めものや揚げものなど何にでも使用する。


ガッティ家のオーガニックエクストラバージンオリーブオイル。
鮮やかな金緑色のオリーブオイルは、口に含むと若々しい辛さとまろやかな旨みが優しく広がる。あわせる素材を優しく包み込みながら、しっかり引き立ててもくれる。

イタリア・カラブリア州にあるスタレッティは、地中海に面した人口約2400人の町。夏場は多くの観光客が訪れるリゾート地でもある。ここに、イオニア海を一望できるガッティ家の農園がある。

コパネッロ岬にある34ヘクタールもの敷地の中には、ローマ帝国時代に築かれたカッスィオドーロ城跡が残り、国の考古学研究対象にも指定されている。この場所で暮らす一家の住居の基礎部分も、1500年以上も前につくられたものだ。
地中海から吹きあげる潮風とミネラルを含んだ土壌がオリーブ栽培に適していることから、この地域では至るところでオリーブ畑が見られる。イタリア人にとって食のベースとなるオリーブオイル。一般家庭でも自宅でオリーブを栽培し、搾油所で搾ったオイルを親戚と分け合うのだそうだ。

200年の樹齢を誇るオリーブの樹と、その足下を緑のじゅうたんが埋め尽くす。夏の乾燥期以外、農園に自生する植物たちが四季折々の表情を見せてくれる。春にはケシやキンセンカ・ヒナギクなど色とりどりの花が咲く。野生のフェンネル・ミント・ローズマリーなどのハーブは香りも楽しませてくれる。ブルボン王朝時代に植えられた1000本のオリーブの樹は全て、自然栽培で育てられている。農園のテーマは「自然との共存」だ。

故リベロ・ガッティさん

農業専門家で自然科学の研究者でもあったリベロ・ガッティさんが、研究も兼ねてこの農園を継いだのは1970年のこと。
「自然のままの環境で育った植物。そこから得られた食品は、健康と健全な生活をもたらす」という信念のもと研究に取り組んでいたリベロさん。環境を破壊せず土の力を引き出し、如何に品質の高いオリーブオイルを得るか。学術的観点からその栽培を探った。

リベロさんは当時主流であった有機的な栽培に疑問を感じ、1985年から一切の肥料と農薬の使用をやめた。そのため当初、年ごとの天候に樹の生育が左右された。結果、実の収穫期間も大幅に縮まったが、オリーブ自体の品質は向上していった。ある年には有機栽培オリーブオイルのコンクールで入賞することもできたが、その翌年はオリーブバエの発生で大損害を受けた。しかし、オリーブのみならず生息するありとあらゆる生き物も保護していくという目的で自然環境を優先し、この栽培の価値を模索し続けた。

農園にはオリーブの生育を阻害すると言われている樫の木がある。また土壌にはびこるオオキバナカタバミも、オリーブや他の草花を侵食することなく共存する姿を見ることができる。この土地では、あらゆるいのちが均衡を保つ。

現在の園主ジョヴァンニ・ガッティさんはリベロさんの息子。リベロさんが世界各地で取り組んできた研究調査に同行し、幼い頃から自然に対する興味が芽生えていった。農園でワイン用のぶどうを足踏みした記憶が今も残っている。
20代からリベロさんをサポートし、その知識や技術を学びながら農作業や自然博物館の運営、大学や研究機関とのプロジェクトを父と共に実現させた。また、博物館の中に自然をテーマにしたショップやワインバーもオープンした。その後は農園を完全に引き継ぎ、現在までオリーブ栽培を続けている。リベロさんの研究やプロジェクトもこれまで通り継続している。(リベロさん逝去後に博物館・ショップの運営は停止)

栽培に関わる作業は、主に剪定・耕起・収穫。丘にある農園は谷や斜面で起伏が激しい。毎年少しずつ整地しているが、地形的に作業車が入っていくことさえ難しい場所もある。ただこういった土地だからこそ、美味しいオリーブが育つとも考えられる。花崗岩がベースの土壌はミネラル分が多く水はけが良い。オリーブは水分を得るために根を深く張る。更に潮風にも常に晒され逞しく育つ環境が、力強いオイルの味わいに繫がるそうだ。

野菜と違って作物の育苗や定植こそないものの、1000本ものオリーブの手入れにはどうしても人の手が必要になってくるため、労働者を雇って短期集中的に作業している。
樹の剪定はオリーブの収穫時、または収穫後に行う。小枝は剪定バサミ、太い枝はモーター付きのノコギリ、高い場所はハシゴに登って1本いっぽん枝を切って手入れをする。

翌年5月。白い花弁とレモンイエローのおしべをもつ小さな花が、ひしめきあうように樹いっぱいに咲き誇る。花が散ると、花よりも小さな実が姿を現す。オリーブの実は約4ヶ月かけて膨らんでいく。花の蕾は小さく、開花した時に気がつくくらい可憐だ。一見沈黙しているような樹のこんな変化に、生命力を感じるそうだ。
6月。足下にある野草の花が咲き終わり、枯れてくる頃が土を耕すタイミング。枯れた草を土にすき込んで畑の腐植にするのと同時に、枯れ草の火災を防ぐ大切な作業となるため欠かせない。炎天下のなか、朝早くから何日もかけて行う地道な耕起は、盛夏を身体で感じる農作業だ。

実が一気に膨らみ収穫が始まるのは、10月初旬。オリーブの品質を優先して、完熟する一歩手前で摘み取る。この地域では一番早いスタートだ。完熟したほうが搾汁率が良いが、品質と個性が失われる。そのため収穫のタイミングに徹底的にこだわっている。熊手のような道具やモーターで枝を振動させて実を落とし、葉や小枝を取り除いてコンテナボックスに集めていく。実が傷つくとそこから腐敗が進んでしまうため、細心の注意を払う。

収穫と並行して進められるのが搾油。油脂分の多い実は枝から離れた瞬間から酸化が始まるため、その日収穫したオリーブはその日のうちに搾油所に持ち込む。夜明けから夕方にかけての収穫。そこから搾油所に向かい、日によっては日付が変わるまで搾油にかかることもある。搾油の温度や時間を確認するため、必ず立ち会うようにしている。収穫期は1年で最も忙しい。

搾油は、酸化が進まないようオリーブの実を低温で温度管理しながら粉砕して攪拌する。そこから遠心分離器で固体と液体、さらに液体部分を油分と水分に分離させる。搾油した後はフィルター濾過をせず、澱(おり)が沈殿するのを待つ。その上澄みだけを別のステンレスタンクに移し替えるという作業を、2〜3ヵ月かけて繰り返す。ようやくオリーブオイルの完成だ。

ボトリングまで終えて、やっと安堵できるというジョヴァンニさん。長い繁忙期を経て、達成感で満たされる瞬間だ。これといった農閑期こそないが、農作業がない時は製品に関わる業務やプロジェクトの進行など、1年中常に手を動かす。

自国でもオリーブの栽培や品質に興味を持たない人が多いのにも関わらず、遠い日本で自分たちのオイルを食べてくれる人がいることがとても嬉しいとジョヴァンニさんは語る。将来はまた博物館を建設し、ショップを運営したいと意欲的だ。

農作業には容易でない条件ながら、環境と伝統を維持してきた。この土地とオリーブ栽培に価値を見出した親子の信念が、1本のオリーブオイルに溶け込んでいる。人と自然とが調和した農園で育まれた作品は、美しく輝いている。


ジョアン・インターナショナル

「ガッティ家のオリーブオイル」

イタリア・カラブリア州の古代カッスィオドーロ城跡にあるガッティ家のオリーブ農園で収穫したオリーブだけで搾った、フルーティーな軽やかさと苦みと辛さをお楽しみいただけるエクストラバージンオイルです。
※JAS マークが印字されておりますが農薬も肥料も使わない、自然栽培のオリーブだけを搾ったオイルです。


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