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ライフジャーナル(大類久隆)

クリスタルウォーターズが目指す共生社会

2025.11.01

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
「自然と調和した暮らし」と聞くと、読者のなかにも憧れをもつ人が多いのではないかと思います。今回は自然との共生を目指すコミュニティ「クリスタルウォーターズ」を紹介します。


 

クリスタルウォーターズが目指す共生社会

パーマカルチャーが息づくエコビレッジ

進化し続ける共同体や自然と調和した暮らし、自然との共生社会と聞くと、読者のなかにも憧れをもつ人が多いのではないかと思います。

今回は、オーストラリアを代表するエコビレッジであり、徹底して自然との共生を目指すコミュニティ「クリスタルウォーターズ」を紹介します。

オーストラリアのクイーンズランド州の緑豊かな山あいに位置する「クリスタルウォーターズ」は、1987年に誕生した世界初の〝パーマカルチャー・エコビレッジ〞として知られています。都市から少し離れた約259ヘクタールの広大な敷地に、250人以上の人々が暮らし、自然と共生する生活を営んでいます。オーストラリアの野生動物保護区としても知られ、カンガルーやワラビーをはじめ、様々な鳥類や爬虫類も生息しています。住民のルールで犬や猫の飼育を禁止していることから、野生動物の生態系を守ろうという高い意識を感じます。


パーマカルチャーを体現する生活

この村の基盤となっているのが「パーマカルチャー」の考え方です。これはオーストラリアのビル・モリソンとデイビッド・ホルムグレンによって提唱されたもので、「自然の仕組みに学び、持続可能な暮らしをデザインする」ことを目的としています。例えば、雨水を貯めて畑や生活用水に利用したり、太陽光や風を生かした家の配置を考えたり。畑には果樹、野菜、草花を組み合わせて植えることで、病害虫を防ぎつつ収穫を増やす工夫もされています。それらは単なる農業技術ではなく、自給自足を基本とした「人と自然が共に豊かになるための暮らし方の設計図」といえるでしょう。

クリスタルウォーターズの住民は、年齢も職業もバックグラウンドも様々です。ある人は有機農業を営み、またある人はベーカリーでパンを焼き、販売しています。毎月のマーケットでは、焼きたてのパンや有機野菜、ハンドクラフトが並び、村の人々と訪問者が交流しています。

クリスタルウォーターズは単純な居住地ではなく、「パーマカルチャー・デザイン・コース(PDC)」と呼ばれる教育プログラムが定期的に開催される、国内外から多くの人々が集まる場所でもあります。受講者は、住民の自宅を宿泊やワークショップに利用しながら、自然と調和した農や建築の方法、そして持続可能なコミュニティ運営の知恵を学びます。また、訪問者向けには「エコパーク」と呼ばれる宿泊施設も用意されており、キャンプサイトや小さなキャビンで短期滞在をしながらエコビレッジの暮らしを体験することができます。鳥の声で目覚め、星空の下で眠る時間は、訪れた人に「自然と生きること」の実感を与えてくれています。学びと交流の拠点としての役割を果たすこの村に長年暮らす住民のひとりは、「ここでの暮らしは、自然と人が互いを育む関係そのもの」と語ります。


地域通貨による経済と学術的価値

クリスタルウォーターズのユニークな仕組みとして「LETS」という地域通貨が導入されています。これはお金に代わる交換システムで、住民同士がサービスや物品を提供し合うときに利用されています。例えば、庭仕事を手伝ってもらった分をLETSで支払うといった具合です。利子もなく、村の中で循環するため、経済的に豊かでなくても安心して暮らしを支え合うことができます。かつては家賃や車の支払いに使われたこともあり、地域経済を守る第二の通貨としての役割を果たしています。

また、こうした取り組みは、学術的にも大きな注目を集め、オーストラリアの大学では「クリスタルウォーターズは持続可能な社会のモデル」として研究対象となり、建築や環境工学の分野では「資源循環の設計」の成功例として取り上げられています。つまり、ここでの暮らしは単なる理想郷ではなく、世界の研究者たちが「未来の暮らしのヒント」として学ぶ実験の場にもなっています。さらにクリスタルウォーターズは、国連の「ベストプラクティス」に選ばれるなど、世界的にも評価を受けています。

しかし、その一方で、農業事業の継続が難しかったり、理想と経済的な現実の間で模索が続いていたりと、課題を抱えているのも事実です。それでも30年以上にわたって続いているのは、「自然と共に生きる」という理念を共有し、互いに支え合う人々の存在があるからでしょう。

クリスタルウォーターズは、「自然と共生する社会は実現できる」ということを実際に示している場所であると言えます。もちろん課題もありますが、その姿は、未来に向けて私たち一人ひとりがどんな暮らしを選び、どんな社会を育んでいくのかを考えるきっかけを与えてくれます。自然や食を通じて日々の生活を大切にしている方にとって、このエコビレッジの物語は、自分の暮らしを見つめ直すきっかけになるかもしれません。






■参考資料:
・クリスタルウォーターズ公式HP
・グローバルエコビレッジネットワーク「影響評価」


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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