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野菜・果物

緑の濃い野菜はキケン!? 本物の野菜の見分け方③

2018.03.26

「硝酸性窒素」という言葉をご存知ですか? これは植物にとっても人間にとっても必要な物質です。なぜならこれがないと多くの作物は育たないからです。でも問題はその過剰さ。摂り過ぎてしまうと、発がん性物質の原因になったり、糖尿病やアレルギーの原因になったりすることを指摘する研究者もいます。

大切なのはバランスであって、偏ってはいけないことです。「硝酸性窒素」は、特にほうれん草や小松菜・チンゲン菜などの葉物に多く含まれています。

硝酸性窒素も、小さい赤ちゃんに大量に与えてしまうと、窒息状態に陥る危険性が高くなってしまいます。「ブルーベイビー症候群」という、地下水汚染で硝酸性窒素が高濃度になった水を飲んで、赤ちゃんが青くなって亡くなった事例もあります。と言われています。硝酸性窒素が、赤血球の活動を阻害するために起こる症状です。

上記の写真は大根の葉を上から見たものです。左側の葉の色が淡く、右側は濃くなっています。左と右、どちらが本来の色味だと思われるでしょうか。

左が肥料を使っていない自然栽培野菜の葉の色味です。そして、右側が肥料を使って育った野菜の葉です。葉もの野菜を見分けるときも、この色味に注意する必要があります。ぜひ淡い緑色の葉ものを選んでください。

 ほうれん草や小松菜などの葉物は「緑が濃いもの」が元気で良いものというイメージがあるかと思います。その理由については「葉緑素」とか「栄養が詰まっている」からといわれています。本当に「緑が濃いもの」は体に良いのでしょうか?

公園の草も空き地に生える植物も、売られている小松菜やほうれん草のように緑の濃いものはありません。よく見れば黄緑がかった淡い色をしていることに気づくと思います。

緑色の薄い野菜は、ひ弱な印象をもつかもしれません。しかし、実際には大根は立派に肥料・農薬なしに育っています。

ヨーロッパやアメリカにおいて、家畜の糞尿により地下水が過度に硝酸性窒素によって汚染された場合に頻発した現象です。ヨーロッパや国際機関では、「硝酸性窒素」に安全基準を設けています。つまり「基準値を超えたものはリスクがあるから食べないように」と呼びかけているわけです。しかし日本では、飲み水の基準はあるものの、野菜についてはまだ規制がありません。

どうして、こんな物質が植物に発生してしまうのでしょうか?

その原因は、肥料にあるのです。先に触れたヨーロッパの地下水汚染のように、家畜の糞尿には肥料成分となる窒素がたくさん含まれています。この窒素が植物に吸収されるとき、「硝酸性窒素」として吸収されるのです。この濃度は投入する肥料の「量と質」によって変わります。肥料が何であるかといえば「窒素成分」を軸に作られているものといえます。有機であれ、化学であれ、肥料とは窒素が軸なのです。

「窒素」は植物にとって成長促進剤にあたります。この窒素は有機肥料にも、化学肥料にも含まれていて、与えれば与えるほど葉の色が濃くなっていきます。
特に葉もの野菜は窒素を吸い上げて一気に育つ性質があり、また植物が硝酸を成長点に近い葉にためる性質があることに起因しています。この窒素が過剰になると緑が濃くなる性質があります。

見た目や生産性を求めるが故に、農薬や肥料の使用を余儀なくしている側面があるのです。いずれにせよ、肥料を使えば使うほど「硝酸性窒素」の危険性が高まっていきます。

こうしたリスクがあるにも関わらず、肥料を入れる。そこに貫かれている思想は「より多く、より速く、より甘く」を求める、このことに他なりません。すばやく成長させ少しでも多くを収穫し、現金に代える。つまり自然な成長スピードを無視して、経済効率を優先した結果といえます。

 決してそれがすべて悪いということではなく、物事には裏と表があり、その両方を知って私たちは判断していく必要があると思います。

硝酸性窒素の問題は飲み水にも影響を及ぼします。畑に使われた家畜の糞尿が、地下水や河川を汚してしまうからです。ヨーロッパでは畜産と農業を一緒に行う伝統が長く、畜産から出る糞尿を肥料として使います。そのため硝酸性窒素による地下水汚染が深刻化していきました。こうした理由からヨーロッパ諸国では、面積当たりの家畜の頭数に制限を設けています。これは窒素を規制していることでもあるのです。

日本の飲み水はダムがメインですので、硝酸性窒素の問題にはそれほど関心が高まらないのかもしれません。それでも日本でも地下水から汲み上げた飲料水が基準値を超えるケースはたくさん報告されています。

自然栽培に取り組んでいる生産者の方に聞いたのですが、放牧で牛を飼っていたことがあったそうです。牛の生態観察する中で、牛は自分たちが糞をした場所に生える草を、決して食べないことに気づいたそうです。糞は動物性の肥料ですから、そこに生える草の色は当然濃い緑になります。

緑の濃い草を食べない、このことが意味するものは、硝酸性窒素の危険性を牛たちは本能で知っている。そのようにも考えられます。季節が過ぎ、その場所の草の色がまた自然な黄緑に戻ってくると、牛たちは再び草を食べるそうです。

「肥料を入れないで育つの?」と感じられる方も多いでしょう。

しかし、目には見えないけれども、土の中にも空気中にも窒素はたくさん存在しています。 空気の70%を占めるという窒素。空から降る雨にも窒素は充満しています。

土中の微生物やさまざまな存在の力を借りて、作物は「天然窒素」を、自分の成長に必要な分だけを取り込むのです。自分が生き残るための努力を精一杯するというわけです。

野菜の根っこは地中深く細かくどこまでも生命維持に必要な水分や養分を探していきます。水がなければ、トマトや枝豆も産毛を必死に伸ばして水分を吸収します。肥料がなければ小さくゆっくりと成長します。作物は環境にあわせて生き抜くすべをもっているのです。

にんじんでいえば、肥料を使って育てたものよりも30日くらい生育が遅いといわれます。ですから細胞が緻密になり、香り豊かでバランスの取れたやさしい味わいの野菜ができるのです。光合成する時間も長くなり、栄養が足りないということはあまり考えられません。

それよりも、肥料を与えなければ、栄養がなくなるのではという常識を少し疑ってみていただきたいのです。

 肥料学の常識は、肥料を入れれば入れるほど味は落ちるというものです。だから、なるべく肥料は少ない方がいい。しかし、経営を考えたとき、「収穫量」を考えて農家は肥料を使うのです。つまり、植物に備わる栄養を考えて「肥料」を与える方はほとんどいないのです。

次回は「水に浮かぶトマト・沈むトマト」です。

○野菜の見分け方コラムは下記からご覧になれます。

野菜の見分け方①「枯れる野菜と腐る野菜?」
野菜の見分け方②「窒素過剰が虫と病気を呼ぶ」
野菜の見分け方③「緑の濃い野菜はキケン!?」
野菜の見分け方④「水に浮かぶトマト・沈むトマト」

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