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ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、普段料理するときに当たり前のように使っている出汁や、「うま味」を多く含む様々な食材など、私たちの食生活を根底から支え、豊かにしてくれている「うま味」の正体から、活用法までを詳しく解説していきます。


 

「うま味」とは何か?

 

世界が認めた第5の基本味(きほんみ)

うま味を使いこなそう!

「今日の料理、なんだかうま味が足りない」「このお味噌汁、出汁のうま味が効いていて美味しい!」など、私たちが普段何気なく口にしている「うま味」という言葉。実はこれ、日本人が発見し、今や世界中で「UMAMI」として通用する公式な科学用語なのです。

今回は、私たちの食生活を根底から支え、豊かにしてくれている「うま味」の正体から、毎日の料理を劇的にレベルアップさせる活用法まで、詳しく解説します。これを読み終える頃には、あなたもうま味の魔法使いになっているはずです。

人間の味覚には、甘味、酸味、塩味、苦味という4つの「基本味(きほんみ)」があると考えられてきました。これらに次ぐ5番目の基本味として認められたのが「うま味」です。基本味の条件は、「他の味を混ぜ合わせても作り出すことができない独立した味であること」です。たとえば、砂糖(甘味)と塩(塩味)とレモン(酸味)をどんなに巧妙に混ぜ合わせても、昆布やかつお節のあの「うま味」を作り出すことは絶対にできません。

人間は本能的に、生きるために必要なタンパク質(アミノ酸)のシグナルとしてうま味を感知し、「美味しい、もっと食べたい」と感じるようにプログラムされているのです。

 

「うま味」と「旨み」の違い

日常会話や食レポなどで、「うまみ」という言葉が飛び交いますが、実はひらがなの「うま味」と漢字の「旨み(旨味)」は、厳密にはまったく異なる意味を持っています。

表記意味・定義具体例
うま味科学的に証明された「第5の基本味」。甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ味覚の一つ。グルタミン酸、イノシン酸などの物質そのものの味。
旨み人が総合的に感じる「おいしさ」のこと。主観的な感覚。「このお肉、脂の旨みがすごい!」「食感が良くて旨みがある」

つまり、「うま味」は味の成分そのものを指す客観的な言葉であり、「旨み」は香り、食感、温度、雰囲気など、あらゆる要素が合わさって生まれる「美味しい!」という主観的な感動を表す言葉です。

うま味発見の歴史:日本人の探求心が生んだ大発見

今でこそ世界中で「UMAMI」と呼ばれていますが、この味覚を発見したのは日本人でした。

時は1908年(明治41年)。東京帝国大学(現在の東京大学)の池田菊苗(いけだ きくなえ)博士は、妻が買ってきた湯豆腐の昆布だしを味わいながら、「この昆布の美味しさの正体は何だろう?他の4つの基本味のどれにも当てはまらない独自の味があるはずだ」と疑問を抱きました。物理化学者であった池田博士は、何と約12キロもの大量の昆布を用いて、[唯松1.1][久大1.2]化学的にひたすら抽出と精製を繰り返しました。その結果、ついに昆布から未知のうま味物質(グルタミン酸)の結晶を取り出すことに成功します。

これこそがアミノ酸の一種である「グルタミン酸」でした。博士はこの味を「うま味」と名付け、さらにこの成分を調味料として製品化することに成功します。彼はこの功績により、「日本の十大発明家」の一人に数えられています。

その後も日本人の探求は続き、1913年には、池田菊苗研究室の研究生であった小玉新太郎氏が、かつお節のうま味がアミノ酸ではなく核酸系物質である「イノシン酸」であることを発見しました。また1957年には国中明氏が「グアニル酸」がうま味を呈することを発見し、その後グアニル酸が干ししいたけのうま味成分であることが確認されました。さらに国中氏は、このグアニル酸塩やイノシン酸塩といった核酸系物質が、アミノ酸系であるグルタミン酸塩と出会うことで、うま味が飛躍的に増幅する「相乗作用(相乗効果)」を化学的に見出しました。このように、うま味の主要な三大成分は、すべて日本人の手によって解明されたのです。

 

うま味成分の化学的な分類(三大うま味成分)

現在、うま味成分として認められている物質は数十種類ありますが、私たちが日常的に料理で活用しているのは主に以下の3つです。これらは「三大うま味成分」と呼ばれています。

  1. グルタミン酸(アミノ酸系)
    o 特徴: タンパク質を構成するアミノ酸の一種。あらゆる食材に広く含まれており、うま味のベースとなる成分です。
    o 代表的な食材: 昆布、トマト、玉ねぎ、白菜、チーズ、醤油、味噌など。
  2. イノシン酸(核酸系)
    o 特徴: 細胞のエネルギー代謝に関わる核酸系の成分。動物性の食材に多く含まれており、力強いコクを与えます。動物の死後、細胞内のATPが分解されることで増加します。
    o 代表的な食材: かつお節、煮干し、牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類など。
  3. グアニル酸(核酸系)
    o 特徴: 同じく核酸系の成分ですが、生の食材にはほとんど存在しません。乾燥させたり加熱したりする過程で酵素が働くことによって生成されます。
    o 代表的な食材: 干ししいたけ、乾燥ポルチーニ茸などの乾燥きのこ類。

うま味を多く含む食材の一覧

うま味は決して和食だけのものではありません。世界中の美味しい料理の裏には、必ずうま味成分が隠れています。以下の図で、どんな食材にどんなうま味が含まれているかが理解できると思います。

うま味が爆発する「相乗効果」と出汁のコツ

うま味の最大の魔法、それは「相乗効果」です。
アミノ酸系のうま味(グルタミン酸)と、核酸系のうま味(イノシン酸またはグアニル酸)を組み合わせると、うま味が単なる足し算(1+1=2)ではなく、掛け算(1+1=7〜8倍)のように爆発的に強く感じられることが科学的に証明されています。

世界中の料理人は、化学がそれを解明するずっと前から、経験的にこの法則を知っていました。

  • 日本: 昆布(グルタミン酸)× かつお節(イノシン酸)= 一番出汁
  • イタリア: トマト(グルタミン酸)× 牛肉(イノシン酸)= ミートソース
  • フランス: 玉ねぎ・セロリ(グルタミン酸)× 鶏肉(イノシン酸)= ブイヨン
  • 中国: 長ねぎ・生姜(グルタミン酸)× 豚肉(イノシン酸)= 中華スープ

家庭でうま味を最大限に引き出す3つのコツ

家庭でもうま味の相乗効果を上手に利用することで、普段の料理が一段と深みのある味わいに変わります。すぐに使える3つのコツをお伝えします。

  1. 「植物性×動物性」を意識する
    いつものお味噌汁(グルタミン酸)に豚肉(イノシン酸)を入れて豚汁にする。
    これだけで劇的な相乗効果が起きます。カレーやシチューを作る際も、野菜(植物性・グルタミン酸)と肉類(動物性・イノシン酸)の組み合わせが美味しさのベースです。
  2. トマトとチーズを「ちょい足し」する
    トマトや粉チーズ(パルメザンなど)は、驚くほど高濃度のグルタミン酸を含んでいます。煮込み料理やスープの味が決まらないとき、少しのトマトペーストやチーズを加えるだけで、味に深いコクと立体感が生まれます。
  3. 干しキノコは「冷水でじっくり」戻す
    生しいたけにはグルタミン酸しか含まれていませんが、干すことで細胞が壊れ、グアニル酸の元ができます。そして、戻すときは熱湯ではなく冷水でじっくりと時間をかけてリボ核酸を抽出し、調理の際には、強火で一気に60〜70℃まで急速加熱することでグアニル酸が生成され、さらに加熱して80℃以上で酵素を失活させ、うま味をロックするのがコツです。

発酵とうま味の深い関係:微生物が作る魔法

うま味を語る上で絶対に欠かせないのが「発酵」の力です。醤油、味噌、チーズ、生ハム、アンチョビ……これらはすべて、元の食材よりもはるかに強烈なうま味を持っています。その秘密は「タンパク質の分解」にあります。

肉や大豆、牛乳などに含まれるタンパク質は、分子が大きすぎて私たちの舌の受容体にはまらず、実はそれ自体は「無味」です。しかし、麹菌や乳酸菌などの微生物が持つ酵素の働き(発酵)や、長い時間をかけた熟成によって、巨大なタンパク質の鎖が細かく切り刻まれていきます。

この切り刻まれた最小単位こそが「アミノ酸」であり、その代表格が「グルタミン酸」なのです。つまり発酵とは、「味のしないタンパク質を、絶品のうま味成分に変換する魔法のプロセス」と言えます。

  • 大豆(無味のタンパク質) + 麹菌・発酵 = 醤油・味噌(グルタミン酸の塊)
  • 牛乳(無味のタンパク質) + 乳酸菌・熟成 = チーズ(グルタミン酸の塊)
  • 豚肉(無味のタンパク質) + 塩・熟成 = 生ハム(遊離アミノ酸と芳香成分の宝庫)

 「時間をかけると美味しくなる」というのは決して心理的なものではなく、タンパク質がうま味に変わるという厳密な化学的現象なのです。

うま味を味方につけて、食卓をもっと豊かに

「うま味」は、日本人が世界に誇る大発見であり、毎日の料理を劇的に美味しくする最強の武器です。
単なる「旨み(美味しさ)」という抽象的な感覚ではなく、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸という具体的な成分のパズルを組み合わせることで、誰もがプロのような深い味わいを創り出すことができます。

今日の夕食作りの際は、ぜひ「この食材にはどのうま味が入っているかな?」「動物性と植物性を掛け合わせてみよう!」と想像してみてください。うま味の魔法が、いつもの食卓に極上の「旨み」をもたらしてくれるはずです。

参考資料:

・特定 非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター                   

https://www.umamiinfo.jp/
https://www.umamiinfo.jp/ikedakikunae/
  

                                                                    ・日本うま味調味料協会
https://www.umamikyo.gr.jp/

・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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