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ライフジャーナル(大類久隆)

なぜアフリカは「豊か」になれないのか 前編

2026.05.20

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、アフリカ、特に西アフリカ一帯は、豊かな自然の大地という印象の反面で、政治的に不安定で貧しいという印象が拭えません。そこで今回は、「アフリカで何が起きているのか?」「なぜ豊かになれないのか?」という問題に焦点を当ててみます。


 

なぜアフリカは「豊か」になれないのか 前編

 

ニジェール・クーデターから見える
終わらない植民地支配の真実

アフリカ諸国で繰り返される政変や経済の停滞。「なぜこうした状況が続くのか?」と疑問を感じたことはないでしょうか。そこで今回は、アフリカ諸国に共通して見られる問題の核心部分を描き、アフリカで何が起きているのかを浮き彫りにしてみたいと思います。

 

クーデターの根底にあるもの

2023年夏に西アフリカの国、ニジェールで起きた軍事クーデターが、世界に大きな衝撃を与えました。民主的に選出されたはずの大統領は拘束され、軍事政権が実権を握りました。欧米諸国のメディアはこれを「民主主義の危機」「憲政秩序の崩壊」として報じ、各国が経済制裁を発動したのです。しかし、現地の首都ニアメの街頭に溢れ出た民衆の反応は、西側の論調とは異なるものでした。市民はクーデターを支持し、かつての宗主国であるフランスの国旗を燃やし、フランス軍の完全撤退を強く求めたのです。

なぜ、民衆は軍による武力行使を歓迎したのでしょう。その背景には、長年にわたる腐敗した政治体制への不満と、名ばかりの独立から半世紀以上が経過してもなお続く「見えない植民地支配」に対する絶望がありました。ニジェールは世界有数のウラン産出国であり、フランスの原子力発電を長年支えてきた重要なエネルギー供給源です。しかし、その莫大な富は十分にニジェール国民には還元されず、同国は国連の人間開発指数で常に世界最下位レベルをさまよってきたのです。

近年アフリカ諸国で起きたクーデターは、ニジェールだけではありません。マリやブルキナファソなど、この五年で複数の国に及び、すべてが単なる国内の権力闘争にとどまらない側面があります。それは、一部の特権階級と旧宗主国・多国籍企業が結託して富が特定の層に集中する構造に対し、民衆の不満が限界に達したことを、軍が代弁したとする見方もあります。そしてこの出来事は、アフリカ大陸の多くの国々が抱える構造的な課題の一端を示しています。

 

「CFAフラン」の呪縛

アフリカの発展を根底から阻害している最も本質的かつ構造的な課題の一つが、旧フランス領アフリカ諸国における、通貨発行権のコントロールです。その象徴が「CFA(セーファ)フラン」という通貨制度です。西アフリカや中部アフリカの14カ国で使われてきたこの通貨は、1945年にフランスが植民地経済を本国に結びつけるために導入しました。表向きは「為替の安定」や「インフレ抑制」などが強調されてきましたが、その実態は、独立後も旧宗主国がアフリカ経済を合法的にコントロールするための強固なシステムでした。

この制度の最大の問題は、長年課せられてきた「外貨準備金の預託義務」にあります。CFAフランを使用する国々は、稼いだ外貨の50%をフランスの国庫に預けるよう義務付けられてきたのです。西アフリカでは、2021年にマクロン政権との合意によりようやくこの預託義務が撤廃されましたが、中部アフリカでは制度改革が進められているものの、自国のインフラや教育、医療のために資金を自由に使えない国が依然として存在しています。

 

富の流出「見えないポンプ」

通貨発行権と金融政策の自由を持たないということは、国家が自律的な経済成長戦略を描けないことを意味します。例えば、自国の輸出産業を育成するために通貨安に誘導したくても、CFAフランはユーロに対して高い水準での固定相場制で結びついており、スーパーでは自国の農産物や乳製品よりはるかに安く、フランス産など欧州の商品が並んでいる状況なのです。そのため、アフリカ産の農産物や工業製品は価格競争力を失い、国内産業は厳しい状況に置かれています。

さらに、この固定相場制と資本移動の自由は、多国籍企業や一部の腐敗したエリート層にとって有利に働く側面があります。彼らはアフリカの資源から得られた利益や資金を、為替リスクなしに、いつでも自由にヨーロッパの口座へ持ち出すことができるためです。つまり、CFAフランは、アフリカの富をヨーロッパへ還流させるための「見えないポンプ」として機能し続けてきたのです。近年、この制度から脱却し新通貨への移行を目指す動きがあるものの、フランスの政治的・経済的影響力は依然として根強く、真の通貨主権回復への道のりは険しいと言えます。

さて、今回はアフリカ諸国が共通して抱える根深い問題として、いまだに続く、植民地支配のカラクリの一部を掘り下げてみました。前編として、クーデターの起きた背景と国民生活の基盤となる通貨の主権を握られることの重大さを伝えましたが、後編ではさらに深く、アフリカ社会を根底から脆弱にしている仕組みに焦点を当ててみます。ぜひ、お楽しみに。
( 次号に続く)


■参考資料:

・ニジェールにおける軍事クーデターに関する各メディアの報道( BBC、ロイター、アルジャジーラなど)
・JETRO「ニジェール政府、フランス原子力燃料大手オラノの子会社を国有化」
・国連開発計画「人間開発報告書2025年度版」
・ファニー・ピジョー、ンドンゴ・サンバ・シラ著「 Africa’s Last Colonial Currency: The CFA Franc Story」
・JETROアジア経済研究所 アフリカレポート「CFAフランからECOへ?」


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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