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ライフジャーナル(大類久隆)

日本の畜産が抱える不自然な真実

2026.02.07

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、日本の畜産が抱える問題点と私たちが取り扱う畜産物に対する考え方や基準をお伝えしたいとと思います。


 

日本の畜産が抱える不自然な真実

世界最低ランク「G」の衝撃
アニマルウェルフェアが「究極の食の安全」である理由

日本の食品は、世界で最も清潔で安全だと言われています。美しくパック詰めされた肉、傷ひとつない野菜、そして「物価の優等生」と呼ばれる安価な卵。しかし、その「清潔さ」の裏側で、日本が世界から「最低ランク」の評価を受けている事実があります。国際的な動物保護団体(World Animal Protection)が定める動物保護指数(API)において、日本への畜産動物福祉の評価は、A〜Gの7段階評価で最低の「G」。これは先進国(G7)の中で最下位であり、動物福祉の後進国とされる国々と同水準です。

日本は、衛生観念が高く、繊細な気配りができる国と言われながら、こと家畜の扱いに関しては、なぜこれほどの遅れをとっているのでしょうか。そして、その現状は私たちの健康にどのようなリスクをもたらしているのでしょうか。今回は、アニマルウェルフェア(動物福祉:以下AW)の視点から、日本の畜産の「不都合な真実」と、食の安全との密接な関係について紐解いていきます。またナチュラル・ハーモニーで取り扱う畜産物に対する考え方や基準も紹介します。


なぜ日本は「G」ランクなのか?

アニマルウェルフェアとは、単に動物を「かわいがる」ことではありません。家畜を感受性のある生き物として認め、誕生から死に至るまで、ストレスや苦痛を最小限に抑える科学的な飼養管理のことです。世界基準では「5つの自由(飢え・渇き、不快、痛み、恐怖、本来の行動)」が指標となりますが、日本の畜産現場の多くは、この基準から大きく外れています。

最も象徴的なのが採卵鶏です。日本では90%以上が「バタリーケージ」と呼ばれる金網の鳥かごで飼育されています。 B5ノートほどのスペースに詰め込まれ、一生涯、翼を広げることも、地面を歩くことも許されません。本来、鶏は砂浴びで体を清潔に保ち、止まり木で休み、巣に卵を産む習性を持ちますが、そのすべてが奪われています。

養豚においても、繁殖用の母豚(妊娠豚)は、「妊娠ストール」と呼ばれる金属製の檻に入れられることが一般的です。自分の体のサイズとほぼ同じ檻の中で、方向転換すらできず、ただ前を向いて餌を食べ、子を産むことだけを求められます。また、ストレスによる他の豚への尾を噛む行動を防ぐため、断尾や歯を削る行為が行われています。

牛も例外ではありません。日本の酪農の約7割が、牛の首を鎖などで固定する「つなぎ飼い(タイストール)」を採用しています。牛たちは搾乳・食事・排泄・睡眠のすべてを同じ場所で行い、自由に歩き回ることはおろか、後ろを振り返ることすら制限された状態で一生を終えることも珍しくありません。

また、世界に誇る「和牛」の現場でも、過剰な「霜降り(サシ)」信仰による弊害が起きています。美しいサシを入れるために、肥育後期にビタミンAを極限まで制限する手法がとられることがあり、結果として牛が失明したり、関節が腫れ上がったりする健康被害が問題視されています。不自然なまでに脂肪がついた肉体は、牛にとって極度の代謝異常の状態とも言えるのです。

EU諸国では、これらの一部は「動物への虐待」とみなされ、すでに法的規制によって廃止、あるいは厳しい制限が課されています。しかし日本では、これらが「標準的な生産方式」としてまかり通っています。


「過密飼育」が最強の細菌を生み出す

AWは「かわいそうだから」という倫理的な問題だけではありません。「アニマルウェルフェアの欠如」は、「食の安全」に対する直接的な脅威になり得ることです。例えば、窓のない閉鎖空間に、何万羽、何千頭もの動物がすし詰めになっている状況による過度なストレスは、動物の免疫力を著しく低下させます。そこに一匹でも病気の個体が出れば、瞬く間に感染が広がります。

さらに問題になっているのは、抗生物質などの抗菌剤の乱用です。これは病気の予防や感染の防止に使用されているのではなく、成長促進のために日常的に飼料に混ぜて投与されていることです。現在、日本では、法律上「成長促進」を主目的として抗菌剤を飼料に添加することは禁止されていますが、実態は、「予防的投与」として使用が続いています。これら抗生物質の乱用は、細菌の突然変異を誘発して薬が効かない「薬剤耐性菌(スーパーバグ)」の出現につながります。 こうして畜産現場で生まれた耐性菌は、肉や卵を通じて、あるいは排泄物による土壌・地下水汚染を通じて、私たちの生活圏に侵入します。

WHO(世界保健機関)はこれを「サイレント・パンデミック」と呼び、将来的にがんによる死亡者数を超える脅威になると警告しています。 「風邪をこじらせて肺炎になったが、どの薬も効かない」――そんな事態の原因が、実は食卓に並ぶ「安価な肉や卵」の生産背景にあるかもしれないのです。逆に言えば、AWに配慮し、動物が健康にのびのびと育つ環境があれば、過度な投薬は不要になります。「健康な家畜こそが、本当に安全な食品になる」。これが、AWが究極の食の安全と言われる所以です。


日本が遅れた構造的理由

ではなぜ、日本はこれほどまでに遅れてしまったのでしょうか。生産者の意識が低いからだと切り捨てるのは簡単ですが、そこには日本特有の構造的な問題があります。
最大の問題として言えるのは、政策支援の圧倒的欠如です。例えばEUなどでは、AWを「公共財」と捉え、ケージフリーへの移行に伴う改修費や、手間賃(ランニングコスト)に対して手厚い補助金を出しています。 一方、日本にはそのようなセーフティネットがほとんどありません。AWへの取り組みは生産者個人の「持ち出し」となり、経営リスクそのものになります。また、物価の優等生として長らく存在してきた鶏卵などは、社会的な構造として流通業者から消費者に至るまで、安さを求めるのが当たり前になっており、すでに極端なコスト削減を続けてきた結果、その代償を、すべて家畜の環境悪化という形で支払うことになっています。

自然栽培の理念とともに考える

最後にナチュラル・ハーモニーの畜産物の取り扱いに際しての考え方と基準を簡単に説明します。
まず、大前提としてナチュラル・ハーモニーは、「自然栽培」の野菜や果物や米を主に販売する会社です。その意味は、単に売るだけではなく、その理念に基づいた、基本方針に沿って商品の取り扱いを行っています。そのため、畜産物については、アニマルウェルフェアを基本に、さらに自然との調和を意識した取り組み、例えば、放牧の重要性を理解した飼養を行っている商品を優先的に取り扱います。

ただし、現代はあらゆる畜産業において、外界との接触を避けることが、ウイルスなど病原菌から遠ざける意味で衛生的であるという、法的な制約があります。このように世の中が自然の摂理に逆行するような流れの中で、多くの心ある生産者が、何とか経営とのバランスを取りながら、自然に沿った生産を続けているのが現実です。その現状を理解した上で、飼料に遺伝子組み換え作物が混入しないなど、自家配合の飼料の割合が多いことや、法定の最低限のワクチン接種のみであることなどを確認します。また、その飼養の環境を考慮し、商品の安心安全だけではなく、畜産動物も命ある生きものとして尊重されることが大切と考え、判断しています。

そのため、現在ナチュラル・ハーモニーで取り扱っている畜産物について、すべてがAWや自然栽培の理念や理想に沿った商品だけではありません。常に飼育環境や経営状態に変化があるため、その状況に応じた努力、試行錯誤を応援しています。例えば、AWで問題となる豚の断尾や歯を削る行為について、他の豚に噛みつくなどの事故が、ストレスを緩和するなど環境の改善を行っても多発する場合に、限定的な実施もやむを得ないと考えています。また、これらの理想的な取り組みに合致する新たな生産者も探しています。

今回は、日本の畜産動物の動物保護指数が最低ランクであったことを踏まえて、実際の問題点を挙げ、食の安全と直結していることも指摘しました。経済効率を重視した結果、その犠牲となるのは、畜産動物であり、最終的に消費者になります。これらの問題は、けっして畜産業だけの問題ではなく農業全体にも言えることです。そして私たちにできることは、情報をしっかりと開示した上で、状況を理解して支えることだと考えています。



■参考資料:
・World Organization for Animal Health公式HP
・World Animal Protection公式HP
・一般社団法人 アニマルウェルフェア畜産協会HP
・農林水産省「抗菌性飼料添加物」資料一式


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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