ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、昨今の日本茶離れから考える日本茶の問題点、そして「最も理想のあり方」を考えてみたいと思います。

日本茶離れが起きている本当の理由
存在意義から見たお茶哲学とは?
昨年、「日本茶離れが深刻化」というニュースがありました。その中で紹介されたアンケートによると、大学生の6割が食事のときに水を飲んでおり、自宅には急須がないか、あっても使ったことがなく、お茶といえばペットボトルのお茶か、ティーバッグで飲むという結果でした。一方で世界的な抹茶ブームにより輸出は増加していますが、原料の茶葉の価格高騰を招き、海外向けの販路を持たない中小製茶業者の経営を圧迫する逆風ともなっています。

現代の日本茶の問題とは?
一般的に言われている日本茶離れの理由として、ライフスタイルの変化が挙げられます。食事にかける時間が減ってペットボトル茶などで済ます家庭が多くなったことや、嗜好の洋風化によってコーヒーなど別の飲料を飲む機会が多いという理由です。
しかし、本当にお茶離れの原因は、ライフスタイルの変化だけなのでしょうか。そこには、もっと根深い問題がある気がします。もちろんライフスタイルの変化の影響は大きいと考えますが、その前に基本的な現代日本茶の問題が存在しており、それが最終的に本来のお茶の姿からかけ離れたものにしてしまったと考えています。

経済効率が招いた結果
まず、現代の日本茶生産の7割以上を占めているとされるのが、早生で収量が多く、加工特性に優れた単一品種の「やぶきた」です。この「やぶきた」の圧倒的な普及により、長年にわたり品質の基準とされ、お茶の味も「やぶきた」の風味に集約されていきました。次に新茶の出荷時期が早ければ早いほど、市場で高い価格がつくため「新茶の早出し競争」が起きました。この早出しの傾向と品種の画一化は大きな関係性があります。つまり、「早く」「多く」「効率的に」という経済的な動機と、それに耐えうる品種の改良・選定が、現代日本茶の味の多様性を失わせた主要な原因の一つと言えます。
また、生産者は摘採期をより早くするためや収穫量を増やすために、肥料、特に窒素肥料に頼ることになります。その多肥料栽培が病害虫を呼ぶことにもつながり、結果的に農薬も多く使用することなりました。さらに、過剰な窒素肥料の施肥は、旨み(アミノ酸)の増加を促すことになりましたが、同時に茶葉本来の爽やかな香りや渋味とのバランスを崩すことになり、濃厚でどこか単調で、重い味のお茶になる傾向があります。
そして、製茶の方法にも問題があります。それは、「やぶきた」の特徴として苦味が強いため、その苦味を和らげるためと、お茶の色と味を濃くするために蒸し時間を長くする「深蒸し製法」が確立されたことです。しかし、これにより茶葉が粉状になり、急須の目が詰まりやすいお茶になってしまい、そして、お茶の最大の特徴である香りが損なわれました。さらには、茶畑の立地が「山間地」から「平地」へ移行したことも、現代の日本茶の味を画一化させた重要な原因の一つであると考えられています。平地への移行は、生産者の生産効率と経営安定化には大きく貢献しましたが、その代償として、山間地特有の気象条件(霧や寒暖差)がもたらす複雑な風味を失うことにつながりました。これらが、現代日本茶の基本的な問題点であると考えています。

さて、これを踏まえてナチュラル・ハーモニーで扱っている日本茶の世界観を説明したいと思います。作り手である「健一自然農園」が拠点を置く奈良県の大和高原は、日本茶の歴史において極めて重要な役割を果たしてきた地域です。京都の宇治と並び、日本茶の発祥地の一つとされ、1200年以上の歴史があることから、健一自然農園の自然栽培の哲学にとって、その立地に大きな意味を持っています。標高が高く、厳しくも奥行きのある気候風土は、茶葉の生命力を引き出すことのできる、茶の栽培に最適な自然条件が揃った山間の冷涼地です。
その歴史ある土地で、高齢化や後継者不足により耕作放棄された茶畑を借り受け、自然の力で再生させる活動を行っており、創業以来、農薬や化学肥料はもちろん、有機肥料も一切使用しない自然栽培を徹底し、現在11ヘクタールの広大な土地に約30箇所の茶畑を維持しています。また、製茶の熱源は、外部から購入する化石燃料ではなく、地域の森の恵みである、広葉樹の「薪火(まきび)」を全面的に利用しています。この薪火利用は、単なる乾燥・焙煎方法の選択ではなく、「自然栽培で育んだ茶葉を、里山の恵みであるエネルギーで加工し、人と自然の調和を追求する」という、彼らの揺るぎない哲学そのものを表していると言えます。そして画一的な旨みを重視したお茶からの脱却を目指し、お茶の多様性を追求しながら、その哲学的な目的である、里山の再生と持続可能性の実現があり、日本茶のあり方として最も理想の姿を再現していると言えます。
健一自然農園は、最終的なゴールを「お茶をつくること」ではなく、「人も自然として在る未来」の実現に置いています。それは、お茶栽培における、経済効率のみを追い求めて画一化した現代社会へ向けての挑戦であると思っています。自然栽培によって、本来のお茶栽培の復興のみならず、地域の文化や環境の再生につながる活動を、私たちナチュラル・ハーモニーは応援しています。
■参考資料:
・Yahoo!ニュース「大学生の6 割が『食事の時は水』~日本茶離れが深刻化~」
・健一自然農園HP
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