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ライフジャーナル(大類久隆)

人間主義で生きること

2022.07.18

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、人工知能との関わり方について考えていきます。


人間主義で生きること

どれほど便利でもまず考えよう!
絶対に明け渡してはいけないこと

ある未来の出来事。「病院から検査結果の連絡があり内容を見ると、『貴方は将来95%以上の確立で乳がんになる可能性があります。ついては予防のための切除をおすすめしますが、同意書が必要になりますので手続きのボタンへお進みください。』という内容が携帯のアプリに届きます。」

未来は遺伝子検査とAI(人工知能)の発達により健康診断の項目に将来なり得る病気の予測検査が義務付けられており、結果により癌の可能性がある場合などは、予防切除を推奨されることになります。切除を行う場合には、保険や入院費用の減額など優遇措置が取られることになります。

さて、これはあくまで未来に起ることを予測したものですが、実はすでに遺伝子検査により癌の可能性がある場合、臓器の予防切除が行われています。特に卵巣がんや乳がんなど女性特有のがんへの取り組みが積極的に行われており、一部の予防切除に公的保険が適用になっています。

未来の生活に欠かせない要素としてAIの存在がありますが、医療の分野に限らず、今後はあらゆる生活環境の中に見出されることになるでしょう。さらに続けると、自宅にいながら常に脈拍や血圧や呼吸、または血液検査を自宅で行い、その結果を常に管理会社が把握しており、問題がある場合にはその日の天候や気温によって外出を控えるようアナウンスが流れます。また、栄養やカロリー計算により食事の内容が決められ、希望すると自動的に推奨された食事が届くシステムになっていたり、冷蔵庫などで足りない食材があれば即日配達され、摂取した栄養やカロリーを数値化して基準値と比較され毎月評価されます。そして夜の睡眠時間も決められることになります。

自宅に限らず社会のあらゆるシステムがAIと繋がっており、すべての交通システムが管理され顔や手のひらの認証で素通りでき、請求はすべてその場で電子決済されます。当然、人の行動パターンがすべて把握されており、どのような学歴や経歴か何に興味を持っているかなどの情報から予測して、自宅のテレビを付けるとその人の志向に合ったCMだけが流れてきます。しかもその人の経済状態を考慮した内容になっているという具合です。

このように社会のあらゆる場面でAIが活用され、指示される内容に従って多くの国民が日々の生活を送ることになります。ある意味とても楽ちんで苦労のない生活が出来そうですね。何しろいちいち考えなくて済み、時間の無駄がなくなるのかも知れません。すでにこれに近い実験が各分野で行われており、実社会に導入されるのも時間の問題だと思います。

AIによって管理される未来が素晴らしいという論調はあちこちで見受けられます。確かに一部の先端企業にとっては将来性があり魅力ある分野でしょう。世界中の関連企業や大学が研究を行っており、その期待がいかに高いかも分かります。確かに車の自動運転や交通事故の防止、ある種の病気の予防には役立つことになるでしょう。しかし、個人的に考えることや選択する意思まで奪われてしまうことは、大きな問題だと捉えています。

2045年問題というのがあります。「シンギュラリティ」※と言ってAIが人間の能力を超える臨界点の時期と言われています。もしくは、人間とAIが完全に融合される時かも知れません。例えばある日、病院や公共機関に電話で相談していて、相手が人間ではなかったことに途中から気付く。なんてこともあり得る話です。このようにAIが人間に取って代わり、人間がこれまで行っていた多くの仕事が必要なくなる日が来ることでしょう。確かにAIの進化と可能性には目を見張るものがありますが、果たして人間の能力のどのくらいまでを凌駕するのでしょうか。人間の能力は私たちが思っている以上に複雑で多くの仕事をこなしています。その能力の中でも最も複雑で再現困難なものは恐らく感情でしょう。また、感情を伴うある種の感性や感覚は人間が長い歴史上、進化の中で身に着けてきた大切な表現能力とも言えます。

人間は日々の活動の中で多くの感情に動かされています。これは、人生のうちほとんどを占めていると言っても良いかも知れません。ただそれだけに苦しみも多く、人間関係などで悩む人も多いのでしょう。むしろそんな感情など必要ないと考えることもありますね。人間の記憶はある意味、連続する感情の蓄積と言えます。感情の伴っていない事柄はすぐ忘れてしまうものです。それだけに感情が人間性を豊かにして魅力あるものにしているのも確かです。この連続した感情の蓄積こそ人生経験そのものと言えるかも知れません。それが、様々な人間関係の中で他者への尊重や思いやりとなって熟成された状態こそ人格となるのです。この人格を形成することは、AIには不可能であると思っています。

人間に備わった感情や感性は、ある意味予測不能な状況に対面したとき、驚きと共に大きな刺激を受け発達します。その経験をする途上で判断や選択をすべてAIに委ねてしまうとすれば、感情の発達に影響する危険性をはらんでいます。恐らくこれからも加速度的に発展する分野であることは間違いないですが、それだけに付き合い方に気を付けないと人間性そのものを失いかねません。

どれほど科学技術が発展しても人間主体、人間主義でなければいけません。それを育むため自然を尊重し、自然と共にあることに喜びを感じる感性を忘れない事が大切です。

※シンギュラリティ…人工知能が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)。または、それにより人間の生活に大きな変化が起こるという概念。


文:類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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