ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、前回(第1回)の続きとして「育むシステム」への転換が、私たちの暮らし ― 特に「子育て」や「家族」のあり方をどのように優しく変えていくのかについて考えてみたいと思います。

前回(第一回)は、私たちが日々の生活で感じる息苦しさの正体が、未来から前借りして無理に成長を続ける「奪う(燃焼)システム」にあること、そして、これからは自然界のように、他者を思いやりながら循環する「育む(発酵)システム」へと社会が転換していく、というお話をしました。今回は、その「育むシステム」への転換が、私たちの暮らし ― 特に「子育て」や「家族」のあり方をどのように優しく変えていくのかについて考えてみたいと思います。
今、子育て中の多くのお母さんやお父さんが、大きなプレッシャーを感じていると思います。朝は時計と睨めっこしながら子どもの支度を急かし、職場では子どもの急な発熱で頭を下げて帰宅、夜はヘトヘトになりながら夕飯を作る。休日は習い事の送迎に追われ、自分の時間など一時もない。なぜ、現代の子育てはこれほどまでに苦しいのでしょうか。
その背景には、今の世の中に深く根付く、経済的自立を求められる社会の構造があり、それが「子どもを持った以上、親が責任をもって育てなければならない」という無言のルールにも繋がっています。競争社会の中で、子どもが将来困らないようにと、教育にお金をかけ、塾や習い事に通わせ、できる限りのことをしてあげたいと考える親も少なくありません。仕事と家事と育児に追われるなか、「夫婦で(あるいは一人だけで)完璧に育てなければ」と抱え込み、子どもの将来への責任まで背負ってしまう。
うまく回らない日々に、「自分の愛情や努力が足りないのでは」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。でも子育てがつらいのは、決して親のせいではありません。「社会的に自立」し「すべてを自己責任」とするような社会の空気が、時に周囲への助けを求めにくくさせているのではないでしょうか。
米国の人類学者であるサラ・ブラファー・ハーディによれば、本来、生物学的に人間の子育ては、周囲の仲間が育児を助ける仕組みであり、それがヒトの進化に果たした役割が大きかったと言われます。歴史を振り返れば、近所付き合いや村の共同体など、子どもは「地域みんなの宝」として、周囲の人々とともに育てられてきました。しかし、現代では「自分のことは自分で」という自己責任の意識が、周囲に助けを求めにくくするだけでなく、核家族化によって周囲の人が置かれている状況や抱えている負担にも目を向けにくくしているように感じます。
では、こうした状況を変えていくには、何が必要なのでしょうか。その鍵の一つとして、子育てや暮らしを「自分たちだけで担う」という感覚を少しだけ緩めて、地域やコミュニティで「共有(シェア)」
していくという考え方があります。
ここで、前回お話しした「発酵」のプロセスを思い出してみてください。発酵とは、微生物が環境と調和しながら、物質をより豊かで有益なものへと「育み、変化させる」プロセスです。子育てもどこか似ているのではないでしょうか。多様な大人たちの手や目を借り、周囲の環境と調和しながら、子どもを育てていく。そんなあり方も一つだと思います。私たち市民や地域コミュニティがゆるやかに繋がり、助け合いながら共有する財産のことを、「コモンズ(共有財産)」と呼びます。「実際に行動に移すのは難しい」と思うかもしれませんが、社会のあり方が見直されつつある今、この「新しい共有」の兆しがすでに芽吹き始めています。

古い競争の枠組みから降り、自らの手で優しい居場所を作り始めている具体的な実践例をいくつかご紹介しましょう。
企業や個人から提供された余剰食品を、生活が苦しい子育て世帯などが、誰の目も気にせず自由に受け取ることができる仕組みです。ここでは「困っている人を助けてあげる」のではなく、「余っているからみんなでシェアしよう」という善意が循環しています。
血縁という枠組みにとらわれず、複数の家族や世代が一つ屋根の下、あるいは同じ地域で助け合いながら暮らすスタイルです。「今日は私が夕飯を多めに作るから、明日は保育園のお迎えをお願いね」「休日はみんなで子どもたちを遊びに連れて行こう」と、親の役割や家事をコミュニティでゆるやかに分け合います。
「危ないからダメ」と禁止するのではなく、地域の大人たちがゆるやかに見守る中で、子どもたちが思い思いに遊べる場所です。親以外の多様な大人に愛され、叱られ、見守られる経験は、子どもに何にも代えがたい安心感を与えます。
子どもは、私たちみんなで大切に育み、見守っていく「宝」です。コミュニティに心を開いていくことで、子育てや毎日の暮らしは驚くほど優しさに満ちたものに変わるでしょう。孤独な競争とは異なる、共に生かし支え合う「優しい世界」が、少しずつ身近な選択肢になってきました。
一方、子どもたちを取り巻く環境を考えるうえで、もう一つ目を向けたいのが「学校教育」です。次回は、これからAIによって私たちの働き方が大きく変わっていくと考えられるなか、点数で競い合う教育はどう変わっていくのか。そして、競争ではなく純粋な「感性と人間性」を育む新しい教育の兆しについてお話ししたいと思います。

参考資料:
・サラ・ブラファー・ハーディ著「マザー・ネイチャー」
・広井良典著「コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来」
・北長瀬コミュニティフリッジHP
・Cift HP
・NPO 法人日本冒険遊び場づくり協会HP
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