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暮らしのこと

野菜landscape「北海道釧路市 勝水 喜一さんのトマト」

2017.09.11

 毎日食べることで初めて知る野菜の表情・感触・香り。想像もしなかった魅力を発見すれば、とことん感動し、出会う美味しさに酔いしれます。
 好きと思ったら、私は毎日ひとつの野菜を料理して食べ続けます。それは料理を通して野菜を理解し、素材が美しく活きた形で食べてその命を全うさせたいと思っているから。日々野菜を迎え、そして送り出す場所から言葉を紡いでゆきます。

 

 もう何年も前のこと。夏のうだるような倉庫に届いた色とりどりの夏野菜たちに混じり、ひときわ光る赤い実に心を奪われた。火照った身体に涼やかな光が通っていくような感覚だったのを覚えている。

 

素っ気ないようで芯があり、独特の静かな美しさを放つ。
私は吸い込まれれるようにして手に取り、無我夢中で観察した。
内側から発光しているかのようなその実は、茜色に染まる空のよう。
手の中に包み込んだ時に感じるずっしりとした重みと、鼓動のような息遣い。
人間の貪欲ゆえに土から離れたその赤い実は、
私たちを優雅に受け止めてくれるおおらかさがあった。

その日は、抱えきれないほどのその実とともに帰路についた。
家の皿は、赤い紅い果汁で染まった。

北海道釧路市 勝水 喜一さんのトマト「妙紅」

 

 勝水さんのトマトは、凛とした清々しさ、誰にも媚びない美しさを感じさせてくれます。包丁を入れた切り口からは、種を包むゼリーの部屋がのぞき、切った瞬間にキラキラと輝きながら浮かび上がってくるようです。決して流れだすことなくゆらゆらと浮かぶのは、きっと種を守るために力を振りしぼっているのだろう。あの茜色を描いているのは彼らに違いない、そう確信しました。
 トマトを皮ごと、薄すぎず厚すぎない輪切りにして皿にならべ、にんにくの極薄切りとバジルをちぎって散らす。オリーブ油をぐるりと回しかけ、ほんのり酸味を感じるくらいの赤ワインビネガーと粗塩を振る。皿に残った汁まで極上の、トマトの一番好きな食べ方です。こうやっていただくと、種を内包している野菜だということを強く意識させられます。

 

 トマトを手でちぎっても、断面や口当たりが素晴らしいです。ゆっくりと裂けて行く様はドライフルーツを彷彿とさせ、そのくらい細胞が緻密だということを感じさせてくれます。包丁ではなく手をつかうと、野菜にも肉肉しさが感じられ、自分の動物的本能も膨らむような感覚です。
 トマトのへたの部分から皮ごと手でおおまかに裂き、皿にならべる。赤玉ねぎの薄切りを散らして、オレガノを揉んで散らす。オリーブ油・赤ワインビネガー・粗塩を振り入れ手で優しく和える。パンを片手に思わず無心になって食べてしまう、原始的な食の喜びを感じられる一皿です。

 

 そして、火入れすると突如現れる深く豊かな酸味と色の重なりは、また官能的なほど美しいです。鍋に、皮ごと裂いたトマト・オリーブ油・粗塩を入れて火にかけます。鍋に、皮ごと裂いたトマト・オリーブ油・粗塩を入れて火にかけます。形を変えて、トマト以上にトマトらしさを放つソース。こんなトマトは他にあるだろうかとつくづく思い知らされます。

 勝水喜一さんのトマトとの出会いはドラマティックで、感じたこと全てが心に刻まれてゆきます。この感情は、きっと色あせることなく生き続けるのだろう。

 野菜は今日も私にたくさんの事を教えてくれます。

 

※勝水さんのトマトは、ナチュラル・ハーモニーにてお取扱いしています。(年ごとに入荷状況が異なるため、販売窓口をお伝えすることができません。ご了承ください)

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このコラムを書いた人

十河 知子

世田谷の本社にて、卸販売の青果を日々受けています。野菜が好きです。というか、野菜の色が体に染まるくらいたっぷり食べないと、とにかく落ち着かない。生きてゆけない。料理する上で最も大切にしているのは、透きとおった素材の味を濁らせないように気を配ること。

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