石綿 敏久さん 信之さん | ナチュラルハーモニーの宅配
 

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父と息子の絆を深めた農と家族の物語 父と息子の絆を深めた農と家族の物語

#04 神奈川県小田原市石綿 敏久さん信之さん

父と息子の絆を深めた農と家族の物語

「カチャンッ」「カチャンッ」
 澄みわたる冬空に、軽快な音がこだまする。園内に張りめぐらされたワイヤーに、とめどなくキウイの枝が固定されていく。
「こうしてバンドで留めておかないと、風で枝が折れちゃうんです。手を抜いて最後に困るのは、自分なんで」。若き跡継ぎ、信之さんは笑った。
 楽しそうに作業する信之さんだが、農家を継ぐ気はなかった。その思いは父の背中をみて募り、また背中をみて、変わった。

 心を捨ててモノを手に入れた一生それでいいのか

見た目が全ての農業に抱いた疑問

 父・敏久さんは、日本で初めて自然栽培のキウイづくりに成功したといわれる先駆者だ。300年以上続く農家の15代目で、キウイの他に柑橘類や梅なども栽培している。農業高校を卒業したあと、20歳で跡を継いだ。
「最初の2・3年は、俺も農薬バリバリでやってたよ。スプリンクラーで農薬まく方法まで出てきて、すげえ時代になったなって、そう思ってた」  そんな折、従来の農業のあり方に疑問をもつ出来事が起こる。
「うちでも一番甘くて美味しいものをみかんの選果場持って行ったのに、評価の点数が低かったのよ」。職員にたずねてみると、皮の見た目こそがすべての評価軸だった。「捨てる皮のために消毒して、評価されてさ。味や中身なんかどうでもいいのかよって」
 当時の農薬は体への負担が大きく、敏久さん自身も散布した翌日は1日寝込むことすらあった。何とか農薬を減らしながら品質を向上させる手立てはないか――参考になる農家も周りにはいない。たった一人、新しい道を歩みはじめた。

自然栽培の確信

 模索するなか有機栽培に取り組み、ほどなくして自然栽培の存在を知る。農薬も肥料も使わないという常識からかけ離れたその栽培法にも、抵抗より興味の方が勝ったという。
 まず、キウイの自然栽培をはじめた。栽培技術も確立されておらず、試行錯誤の連続だった。そんな中、「肥料や堆肥が、病気や害虫を引き寄せる原因なのではないか」と思うようになり、ある実験をおこなった。
 それは、果樹農家がもっとも恐れる病気のひとつ「かいよう病」に感染したキウイの枝を、感染していない自然栽培キウイの樹に接ぐというものだった。この病気は感染力が強く、剪定バサミ越しはもちろん空気中でも感染し、最悪の場合は園地を全滅させてしまうことすらある。だが、予想は的中した。自然栽培の樹にはかいよう病は一切感染しなかった。
 そして、これまで土に施してきた肥料や堆肥の栄養分を抜くため、積極的に牧草類をまいた。無数にのびる根は土そのものを柔らかくし、果樹の生育にもはずみがついた。

2011年の震災―この土地に根を張ろう

就農して3年目まで病気が絶えなかった。さつまいもが全く育たなかったり、大根が虫に食われたり、空豆がアブラムシで全滅したりもした。

再確認した家族の絆

 一方で、農地の獣害が深刻化した。過疎化もあって猟師が減るなかでは、農地を守るには自分で猟をはじめるよりほかない。罠の免許を取ってからは、他の農家からも駆除を頼まれるようになった。多忙を極めるなかで、敏久さんが家にいる時間は一層少なくなった。すれ違いから、家族と衝突することもあった。
 信之さんにとって、忘れられない出来事がある。数年前、お姉さんを亡くした日のことだ。
「うちの親父は泣かないんですよ。でも、泣いてるとこを初めて見たんです」。悲しみは限りなく深かったが、改めて、家族の大切さを感じた。
「大学3年生で、卒業後の進路に悩んでいる時でもありました。悩みに悩んだ末に、農家を継ぐことを決めました」。今では害獣駆除の多くを信之さんが担い、農作業の責任分担も増えてきた。「打ち込めるだけのものだから、没頭できているのかもしんないですね。親父も口には出さないですけど、おんなじように葛藤して、頑張ってるのかなって」
 痛みや苦労を分かちあうことで、二人の距離は縮まった。天国にいるお姉さんも、きっと微笑ましく見守ってくれているにちがいない。

歩みはじめた親子

 自然栽培の取り組みもあり、敏久さんのもとには海外からも頻繁に視察団が訪れるようになった。周りの見る目も少しずつ変わってきたという。
 それでも、二人は自然栽培が、そう簡単に広まるものとは考えていない。地域に根ざし、周囲と調和をはかりながら結果を出し認められる難しさを、誰よりも知っているからだ。だからこそ、次なる有志へと想いのバトンを繋ぐことも怠らない。自身が会長をつとめる自然農法小田原普及会では、栽培法を超えて様々な生産者と交流をつづけている。小学校での農業指導に至っては、信之さんが通っていた時から継続している。こうした活動の充実ぶりも、信之さんのサポートがあってこそだ。
「こいつが畑の写真とか撮りまくってるからよ。おめぇなんだ写真屋か、なんてな。でも、講演とかでそのデータが役に立つんだわ。説得力が出る。そういう意味では重宝してるよ」。不器用な父は、素直に息子を褒めたりはしない。だがその言葉には、理解しついてきてくれる喜びが、隠しようもなく滲み出ていた。
 並んで立つ二人の後ろ姿は、ほとんどそっくりだ。

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