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ものづくりのこと

本物の醗酵食品「天然麹菌の醤油づくり」

2017.07.5

 私たちは自然栽培の原料を元に、純粋培養でない「天然の蔵付き菌で醸した醗酵食品」づくりに取り組んでいます。今でこそ味噌・醤油・お酢・みりん・納豆などといった醗酵調味料を多く販売できるようになりましたが、開発当初は手探りそのものでした。

 醤油を開発していた時もそうでした。初めての天然菌での醤油造りのチャレンジが完成間近という段階でつまずきました。醗酵が途中でうまくいかなくなったのです。その蔵元からは「これを醤油というにはどうしても納得出来ないので止めさせてほしい」と言われました。仕方の無いことでしたが、悔いを残しながらも開発を途中で断念しました。

 そもそもこの試みは、福井県の「マルカワみそ」で50年以上前に行われていた、麹菌を自家採取するという技術の復活から始まりました。初めて聞く人にとっては分かりづらいと思いますが、市販の醗酵食品に使用されている醗酵菌のほとんどは、化学的に純粋培養されたものです。私たちは、より自然な状態で採取された菌を使った醗酵食品を復興(かつてはこの方法が用いられていたので)させようと決意しました。近年ではまったく前例がなく、協力者もいない状態。暗中模索ではじまった取り組みでした。

 お願いしていた蔵元での醤油の醸造が失敗に終わり、その後引き受けてもらえる蔵元が見つからず焦りばかり募りました。そのとき白羽の矢が立ったのが、静岡県の「栄醤油」でした。古くから木桶と無添加の本醸造にこだわり続ける数少ない蔵元でしたが、最初にその話を提案させていただいたときには、当然のことながら断られました。当たり前といえば当たり前です。天然麹菌をはじめ、大豆・小麦・塩に至るまですべての原料を持ち込んで醸造してほしいなんていう突然のお願いでしたから……。

 味噌や醤油は麹菌によって醗酵される代表的な食品。たとえ無添加や本醸造に取り組んでいたとしても、麹菌に関しては種麹菌をメーカーから購入するのが普通です。味噌には味噌用の麹菌、醤油には醤油用の麹菌があり、目的別に合わせた麹菌が純粋培養されたものが市販されています。規定通りに使用すれば、ほぼ安定して醗酵食品を製造することができます。

 一方、当時唯一存在していた天然麹菌は「マルカワみそ」で自家採種したものだけでした。そのため、味噌蔵で採取した麹菌を醤油の醸造に使用することになり、そんな条件は普通受け入れられるものではありません。醗酵が上手くいかないと、桶丸ごとダメになったり、蔵全体に影響が及んでしまうことも考えられます。

 しかし話し合いの末、栄醤油代表の深谷益弘さんより「やってみましょう」と言っていただけたのです! 勇気ある決断をいただき、希望が見えたという思いと同時に安堵の気持ちいっぱいだったのを今でも覚えています。

「栄醤油」は静岡県掛川市の横須賀にある蔵元で、創業は1795年(寛政7年)。横須賀は徳川家康由来の城があったことから城下町として栄えた町で、創業当時は刀鍛冶と並行して醤油造りを行なっていたそうです。時代の変遷とともに醤油造りにも大きな変化がありました。昭和の高度成長期では合理的に大量生産することが求められ、醤油業界でも大規模化と近代化が進みました。添加物などを使うことで、より安く短い時間で大量に製造される醤油が出回るようになりました。しかし「栄醤油」ではその時代の流れに逆らうように、良質な原料と昔ながらの醤油造りにこだわり続けました。

 その本物にこだわってきた長い歴史と、その経験に裏打ちされた技術があったからこそ、天然麹菌による醤油づくりに同意してくれたのでしょう。

 最初の仕込みは初めての連続。天然麹菌が醗酵してゆくプロセスは、純粋培養菌に比べてゆっくりで、最初はモロミになかなか変化が起こりませんでした。通常醗酵が盛んになると、木桶全体でモロミが膨れ上がりプツプツと二酸化炭素を放出しますが、それが一向に始まりません。しかし、櫂入れなどの工程を試行錯誤した結果、ようやく醗酵が始まってくれました。醗酵は順調に続き、約1年半の歳月を経て無事に醤油ができあがりました。天然麹菌による濃口醤油「蔵の雫」です。このとき出来上がった醤油は、今でも忘れられない味わいです。

 その後、独自に麹菌の自家採種も始めた栄醤油。技術的な情報がない中、昔の文献を参考にしたり、過去の仕込みデータと照らし合わせたりして、安定的な自家採取の方法を探り編み出しました。

 良い素材に頼るだけではなく、常に醤油造りの技術に向き合い続ける姿勢。代表の深谷益弘さん、長男の允さん、そして蔵人の古川真輔さん。栄醤油の三人の二人三脚ならぬ三人四脚の取り組みで、今があるのだとつくづく思います。みなさんのひたむきな姿勢と熱意、その姿を垣間みれただけでも、この「蔵の雫」には存在する意味があるのだと思えます。

 天然の蔵付き麹菌と自然栽培の原材料から造られた醤油。栄醤油醸造さんに先祖代々伝わる木桶で仕込む伝統的な醤油は、天然菌独特の深みある一品です。酸味と旨味と奥行きに余韻があり、他にはないクリアな美しさがあります。「蔵の雫」醤油は、弊社宅配またはウェブショップmaiにてご購入いただけます。
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このコラムを書いた人

大類 久隆

商品部とハーモニックデザイン・ラボ担当。とにかく何でも調べるのが大好きです。自称、社内一の加工食品オタク。食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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