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ハーモニックライフ（調和する生き方）という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類（おおるい）が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、日本人にとっては身近な木「松の木」に注目してみました。
いま世界中で起きている立ち枯れの本当の原因は！？
問題の本質を見極める大切さ
前回、松の木の立ち枯れの原因が、環境中に放出された過剰な窒素による影響であることを書きました。
後編の今回は、まず誤解のないように窒素について説明しておきます。本来単純に窒素と言う場合には、空気中に78%含まれる窒素を指していて、無味無臭の無害な物質であり、有機物を構成する重要な元素でもあります。この窒素が微生物や植物、または科学的反応によって別の形状に変化したものを広く窒素化合物と言います。このうち人為的に発生したものが、環境中に過剰に放出されて問題になっているということです。
さて、窒素化合物の中でも酸素と結合したものに硝酸態窒素や亜硝酸態窒素という窒素酸化物がありますが、植物の成長に必要な成分でもり、これは窒素肥料の原料にもなる成分です。また有機性窒素はアミノ酸やタンパク質の基になるなど、広くは動植物の栄養になる成分とも言えます。このように窒素は様々に変化することで、動植物が生きるために欠かせない要素になっているのです。
しかし、これらの窒素化合物が過剰になることで、海や河川の富栄養化によるプランクトンの異常増殖を引き起こし水質の悪化を招いたり、植物に窒素肥料が過剰になれば障害が出ることも良く知られています。近年はさらに世界的なレベルでこの過剰窒素の問題が取り沙汰されています。
ただ、地球環境全体に影響を及ぼしていることは分かっていますが、いまだ全体像と影響範囲も複雑であることから様々な観点からの研究が進められているところであり、取り組むべき方向性もこれから具体的になると思われます。
かつて話題になった酸性雨は、多くが化石燃料の燃焼時、つまり自動車の排気ガスや工場から出る排煙よって発生する窒素酸化物が問題になりましたが、近年はこの窒素酸化物は減少傾向にあります。自動車の排気ガス規制が厳しくなったことや、工場も環境に配慮した排気システムを採用したことが理由でもあります。
その反面で農業由来の窒素化合物が問題になっています。実は人為的に発生する窒素化合物の86%が農業由来であると言われています。その原因となるのは、化学肥料、動物性の堆肥、家畜の排せつ物、作物自体による窒素固定などで構成されています。これらが原因で大気中に直接放出されたり、土壌に浸透して地下水や河川を汚染することになります。特に化学肥料はより直接的なのですが、施肥された50%は作物に吸収されずに土壌に浸透もしくは、大気中に放出されると言われています。さらに窒素酸化物の一種である一酸化二窒素は強力な温暖化ガスでもあり、二酸化炭素の300倍の温室効果があります。
このように過剰な窒素化合物の増加は、地球環境の様々な側面で生態系に影響を与え、すでに人類にとっても脅威になりつつあります。
全体像をテーマ別に簡単にまとめます。
●水・・・富栄養化、地下水汚染
●大気・・・窒素酸化物、光化学スモッグ
●温室効果・・・一酸化二窒素
●生態系・・・酸性雨
●土壌・・・硝酸態窒素、酸性化
さらに言えば、経済活動や家庭から出る食品ロスにも関係があります。つまりタンパク質を含んだ食材を廃棄すれば、当然環境中に窒素分を間接的に放出したことになり、広く見て人の生活に深く関わっていることが分かります。ただし、これらをすべて止めようという話ではなく、正しい自然循環の下に適正な管理が必要であるということです。
今回は松の木が立ち枯れてゆく原因から、複雑な窒素循環の思わぬ影響を描いてみました。人間は身近に起きている現象をその部分のみ切り取って合理的に解決しようと考えがちですが、多角的に見ると、環境は複雑に絡み合って生態系を保っている事をうかがい知ることができます。人類が経済合理性で良しとした行為によって、どれほどの負の遺産を次世代に背負わせているかを、もう一度広い視点で見つめる必要があると思います。
【参考資料】
『日本人の窒素フットプリント』 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
『西尾道徳の環境保全型農業レポート No.348』
大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……？
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