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ライフジャーナル(大類久隆)

人々はなぜ分断され争うのか

2020.02.05

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、ナチュラル・ハーモニーの商品部スタッフ、大類(おおるい)が世の中について考察するライフジャーナル。
今回は、争いの発端となっている “分断” について、世界の事例から考察しました。


人々はなぜ分断され争うのか

気付かぬうちに分割され利用される人々
止められないローマ時代から続く手法とは

前回のコラム「自然との調和ってなんなの?」で、これからの時代は「共感」する心が大切だと書きましたが、共感するとは人間同士だけではなく、人間と動物・人間と植物の関係性の中でも成立することです。言い換えれば人間と大自然との共感性を育むことが、最も大切な価値観を思い出させてくれることになるでしょう。

さて、今回のテーマはその共感を最も必要とする事柄かも知れない「分断」について書いていきます。

似た言葉で、「分裂」や「分散」がありますが、分断は明らかに自らの意思とは別に強制的に分かれた状態と言っていいでしょう。国・民族・宗教・言葉、場合によっては身分もそうかも知れません。
人類は長い歴史の中であらゆる分断を経験してきましたが、それを回復させ統合することの難しさも学んできたはずです。しかし、歴史上一度分断された状態を元に戻すことは、極めて困難であることが分かります。

では、なぜそれほど困難な状況に陥ってしまうのでしょうか?

国家が分断された例をとると、過去も含めていえばドイツ・ベトナム・朝鮮半島などをはじめ数多くの国が分断されてきました。しかし、そもそも分断したのではなく強制的にされたものです。それぞれ政治的背景は違うものの、共通することは過去植民地であったか戦争で負けたことが理由になります。そしてほとんどのケースで国が分断されて分かれた国同士が反目し合うことや国単位ではなくても国民同士が心理的に分断され、いずれ争いが激化して泥沼の紛争が続くことがあります。

これは、物理的に分断されたから結果として起きていることではなく、あえて争いを起こすために意図的に分断しています。つまり宗主国や占領国は、最初から国を統治しやすくするためにそのような政策をとるのです。この手法は歴史的に古くからあり、現代でも形を変えながら巧妙に自分たちの利益に繋がるようにコントロールされています。

この手法を「分割統治」または「分断統治」(ディバイド・アンド・コンカー)と言います。古代ローマ帝国が支配下の都市を治めるため、都市間の連携を分断し反対勢力の力を削ぐために行われたことが始まりと言われています。これを後のイギリスやフランスが植民地を統治するための政治的手法として取り入れてきました。具体的には、統治したい国に多数の人種・民族・宗教が存在する場合、これらにあえて格差をつけるということです。

例えばAという人種は優秀であると公言し優遇して国の要職に就かせるなど統治に協力的に仕向けます。一方でBという人種は劣っていると公言して差別的で不利な立場に陥れます。こうすることによって両者は反目し合い、対立関係と争いが絶えなくなり、ときに大きな紛争に発展する場合があります。結果的に支配する側から目を背けさせて本質的な問題に気づかせないことが出来るというわけです。規模の違いはあれ、国単位や組織単位で反目し合うよう継続的に巧妙な情報を流していきます。

日本は戦争に負けましたが、国が分断されていないと思われるかもしれません。しかし日本はアジアの周辺国同士で分断されています。お互いの国で情報や教育をコントロールして協力関係を作らせないように誘導されていますが、現代はより複雑化していると言っていいでしょう。

世界を見渡すと、多くの内戦や紛争がこの手法の果てに起きた悲惨な結果であることが分かります。例えばアフリカのルワンダで起きたルワンダ虐殺は国民の20%近くが犠牲になりましたが、典型的な分断政策によって起きたフツ族とツチ族の争いでした。また、史上最悪の紛争と言われた旧ユーゴスラビアで起きたボスニア紛争も死者20万人、避難民200万人以上という莫大な被害が出ています。

どちらのケースも複雑な背景があり政治的な違いはありながら、共通するのは同じ手法が見え隠れしていることです。このような状況は特定の地域だけの話ではなく世界中のあらゆる所で起きているということです。

東西ドイツの分断の場合、第二次大戦後にナチスドイツのような全体主義を台頭させないため、国力を削ぐために分断したという理由があったとしても、結局は社会主義と資本主義というイデオロギーの対立を生み出し、ベルリンの壁という物理的な分断とともに東西世界を分かつ象徴となっていたことは間違いありません。

もっと身近な例で説明すると、ある団体や組織の力を奪うために一部の友好的なグループを優遇して特権的な立場を与え、一方で反抗的なグループには懲罰的な対応を続けることで双方の間の連携を断ち切ることや格差や階級を作り出して優越感を持たせることや自己評価を下げることを巧妙に行います。見えない心理的な壁を作り出して、コントロールを容易にして本質的な問題点に気付かせないようにするということです。

ここまでの話を読んでいると、気が滅入ってくる方もいらっしゃるかも知れませんね。でもこれらは決して陰謀論や架空の話ではなく、歴史上の事実としてあることです。ですから分断させることには必ず目的が存在して、背後に利益を得る国や組織が存在しているのです。特に日本では、このような政治的手法があることすらあまり議論になりません。それどころか、免疫がないため単純に起きている出来事を表面的にしか捉えられず、本質の問題に気付かないまま解決の道すじも見えてこないことがあります。

さて、これら一連の手法を見ていると実は社会全体が、意図的なのかは分かりませんが、随所に同じ手法が使われる構造の中にあることが分かります。今の学校教育はあえて階級や格差を奨励していないでしょうか? 多くの企業でやる気を求めながら没個性を望まれている組織はどうでしょうか? 社会全体で経済格差を問題としながら、実は格差が存在しないと社会が成り立たないような仕組みになっているのはなぜでしょうか? 人間はみな平等であるとしながら、不平等であることに安心感を抱いていないでしょうか?

つまり、すべての社会の中で優越感を持たせたり自己評価を下げる手法が普通に行われており、その心理的な偏りが発端となった社会問題や事件の根本的な原因になっているといえないでしょうか? もし、この社会全体が何かしらの意図があって現在のような構造になっているとしたら、いったい背後に何があるのでしょうか? その目的は何なのでしょうか? そう考えると末恐ろしくなりますね。ぜひ皆さんも想像してみてください。

しかし、悪い話だけではないのです。人類は長い間、物理的にも心理的にも多くの分断を経験してきました。その経験を通してこれからの世界に何が大切かを見極めようとしています。その争いは本当に必要なのか、本質的な問題は何なのか、そういった議論が少しずつですが、浸透してきています。社会が大きく変化するとき必ずきっかけとなるのは民衆の力です。私たちひとりひとりが分断ではなく調和の道を歩むためにも共感する心や表層的な情報に流されない強い意思が必要です。

ドイツを分断したベルリンの壁が崩壊して今年でちょうど30年が経ちます。統一後も様々な混乱が残りましたが、最後まで残った困難とは、人々が心の中に作った壁を取り払うことであったと思います。しかし今は困難を乗り越えて一つの国としてヨーロッパ諸国を支えています。

人を物理的な壁によって分断するのとは別に、私たち自らも心の中に壁をつくっています。そして、気が付いたらとても狭い世界に閉じ込められていることがあります。その壁を作るものは、優越感・利己心・猜疑心・怒り・恨みといった心の状態かもしれません。

その困難な壁を超えるためにも、常識や当たり前といわれることを一度見直してみる必要があるでしょう。

2009年6月25日、ある天才的ポップスターが亡くなりました。彼は歌の中で平和と愛のメッセージを本気で伝えようとしていましたが、悪質なメディアにより様々な噂を流され人格攻撃を受けてきました。
一見アイドルのような存在でしたが、彼の残した歌はどれも強烈なメッセージソングであったことが分かります。そんな困難な状況の中でも歌い踊り続けた彼の勇気を称えたいと思います。

『より良い世界を作りたいと願うなら まずは自分自身を見つめ、そして変えていくのさ。
 今すぐ始めなくちゃ、時間があるうちに。目を背けないで』

――マイケル・ジャクソン
「Man In The Mirror」より


大類 久隆
ナチュラル・ハーモニーの商品部担当。
とにかく何でも調べるのが大好きです。
自称、社内一の食品オタク。
食べることも忘れて日夜奮闘中……?


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