ライフジャーナル「今こそ先人の智慧(ちえ)を学ぶとき」 | ナチュラル・ハーモニー
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きほん情報

暮らしのことライフジャーナル(大類久隆)

ライフジャーナル「今こそ先人の智慧(ちえ)を学ぶとき」

2019.07.12

ハーモニックライフ(調和する生き方)という観点から、世の中について考察するライフジャーナル。

選挙も控えておりますが、改めて理想の社会制度について、歴史もさかのぼり考えてみました。

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「今こそ先人の智慧(ちえ)を学ぶとき 」

アメリカ合衆国憲法に隠された物語
母系社会の高度な民主制度とは

 今回はタイトルに「智慧(ちえ)」という言葉をあえて使いました。本来は「知恵」を使うべきなのですが、知恵は知識が豊富で判断力に優れているなど、一般的に頭が良いことを表すそうです。これに対して智慧は仏教用語として使われますが、あらゆる物事や現象の背後にある本質を見極める力を備えていることを表します。

 さて、アメリカ合衆国ニューヨーク州北部のオンタリオ湖からカナダにまたがっている地域一帯に、6つのインディアン(※)部族により構成されている「イロコイ連邦」という保有地があります。多くのインディアン居留地の中でもイロコイ連邦は自治権が強く、外部からの一切の干渉を受けることもないなど、アメリカ合衆国から正式に独立した準国家と認められています。しかし、そもそもはヨーロッパから白人がアメリカ大陸に渡ってきた中で、彼らの土地を暴力や謀略によって奪い、現在のような狭い居留地に強制的に移住させてきた歴史があります。

 基本的な人権や自治がある程度認められているものの、多くのインディアンの生活が現代社会と無理に融合させられました。彼らの文化や生活習慣が大きく失われ、貧困問題やアルコール中毒・薬物中毒が蔓延し、民族としての尊厳も大きく毀損している状況です。しかしその中でもイロコイ連邦は特別な存在感を放っています。

※正式にはネイティブアメリカン。

イロコイ連邦の国旗

 彼らはヨーロッパから白人が入植するはるか以前の1000年も前から高度な民主制の社会を確立していたと伝えられています。その大きな特徴は母系社会による徹底した民主主義が貫かれていたことです。各部族からクランマザーと呼ばれる女性の長が選ばれ、すべてを取り仕切る権限が与えられていました。家系を継いでいくのも女性でした。とても長いあいだ理想的な民主的社会を築いてきたわけですが、そこに至るまでには彼らにとっても困難な道のりがありました。

 口承によって伝えられている内容によると、遠い昔は各部族の争いが絶えず、長いあいだの闘争の歴史がありました。いつの時代かは諸説ありますが、後に伝説となったグレートピースメーカーと呼ばれる戦士が現れ、争いをやめ平和に生きることの意味を各部族に伝え続け、100年かかったといわれる長い説得の末、ついに各部族を集め平和会議を開くことに成功します。その際の取り決めを「イロコイ憲章」といい、文字を持たない彼らは、その内容を貝殻ビーズの帯を象形模様として表したワイパム・ベルトに記録して現代に至るまで大切に保管しています。

 会議では、すべての部族の武器を一本のホワイトパインの木の根本に埋めて、「この武器によって流された血と涙は、この木の下に流れる水によって洗い流されるであろう」という宣言の下、争いを終結し建国の誓いを立てたとされています。その建国より完成されたイロコイ連邦の民主制度は先に書いたとおり、強固な母系社会を基礎に形づくられており、氏族(クラン)ごとに選出される族母(クランマザー)と族母に任命された族長(チーフ)を中心として、明確な代議制と合議制の機能を備えています。物事の決定にはすべての人に発言権を認め、多数決ではなく全員が一致するまで話し合いを続けるというのが特徴です。

 さて、このイロコイ憲章について、後のアメリカ合衆国が独立する際の連邦制度と合衆国憲法の制定に大きな影響を与えたとされています。アメリカ合衆国建国の父と呼ばれるベンジャミン・フランクリンやトーマス・ジェファーソンらが、連邦制度の確立と憲法制定の際に何度もイロコイ連邦を始めとするインディアンの代表から多くのアドバイスを受け、その高度な民主制度の仕組みを学んだとされています。ここに至るまで、フランクリンやジェファーソンは世界の文献や歴史から民主主義の原型となるものを探したのですが、手本とする形を見出すことができず、最終的にイロコイ憲章の中にその理想を発見したといわれています。

 その当時、ヨーロッパを中心とする西欧諸国が苦しみの中で民主主義の確立を模索していた時代のはるか昔から、イロコイ連邦は理想の民主制度を確立して実践していたことになります。その後アメリカ合衆国憲法は、後にヨーロッパへ渡りフランスにも影響を与えたといわれています。つまり、多くの国の憲法や建国の理想の中にイロコイ憲章の理念が息づいているといえます。

 彼らが影響を与えたのは連邦制度や憲法制定だけではありませんでした。言論の自由・女性の参政権・公職者に対する罷免制度など、現在の民主主義では当たり前になっている制度が数多くあり、その仕組みの完成度がいかに高かったかが理解できます。

 しかし今、先進国をはじめとした多くの国で民主主義の理念が揺らぎ始めています。社会を取り巻く経済の不安定な状況や資源の問題・移民の問題、そして民族同士の主義主張の違いよる争いなど、解決が困難と思われることが山ほどあり、それが社会を覆い尽くしてしまっているかのようです。これは、あらゆる面で既存の仕組みが機能しなくなり、国家自体の方向性が見いだせなくなっている証拠です。

 アメリカ合衆国をはじめ、各国が建国の理念に立ち返り、その根底に息づくイロコイ連邦の深い智慧に学ぶときでしょう。国・民族はどうあるべきか、という問いに対して国民一人ひとりが真剣に考えるときだと思っています。

 彼らインディアンが政治的な決断を迫られたとき、必ず七世代先の人々のことを最優先に考えるといわれています。これから生まれてくる子供たちが、自分たちより悪い世界で暮らすことのないよう、できるだけ良い世界に生まれてこられるようにするのが、私たちの仕事であるといっています。

 また、多くのインディアンが共通して訴えていることがあります。それは人間があまりにも自然から離れてしまっていること、自然から学ぶ姿勢を忘れてしまっていること、自然をコントロールし利用するだけのものと考えていること、自然に対してあまりにも謙虚でなくなってしまっていることなど、現代人の多くが自然と隔離された状況で生活していることをとても憂いています。

 かつてヨーロッパの名高い知識人といわれる人々が、民主制度を様々な角度から模索していたとき、イロコイ憲章から多くを学びとり、彼らのことを「高貴なる野蛮人」と称しました。おそらくそれが精いっぱいの賛辞だったのかもしれません。それほどの驚きをもって迎え入れられ学んでいたのです。

 私たち先進国に住む人々は特にですが、社会は常に進化し続けていると考えがちです。そして時間とともにそれは進んでいると信じています。はたして本当にそうでしょうか? そしてインディアンを始めとした先住民族といわれる人々の文化や習慣を遅れたものと思いがちです。イロコイ連邦も長い年月のあいだに多くの過ちや間違いを犯してきました。しかしそれを真摯に受け止め二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓い、気の遠くなるような努力の末、現在の姿になっているということです。だからこそ、いま彼らの声に耳を傾けるときではないでしょうか。

 前回のコラムでこれからは「所有」するという概念を変えるべきだとお伝えしました。ほとんどのインディアンには財産や土地などを所有するという概念がありません。自分たちは自然の一部として生きているだけ、という考え方です。彼らにとってみれば自然を所有するとはどういう意味か、想像すらできないのです。白人が入植し土地を争う姿を見て、必要なものはすべてあるのになぜ殺してまでして奪おうとするのか理解できませんでした。現代人に物を所有するなといっても無理がありますが、認識として地球のあらゆる資源は本来所有するものではないという意識の転換が必要だと思っています。

 日本でも憲法改正が叫ばれています。ほとんどの国民にとって普段憲法を論じることはないと思いますし、読む機会もあまりないでしょう。現在の日本国憲法が戦後どのような経緯で制定されたかで議論がありますが、まず現在の憲法を軽んじている状況、つまり本来憲法より下位に位置する他国との条約などが明らかに優先されている状況を理解することが大切です。そして国家とはどうあるべきか、彼らに習い100年先を見据えた議論が必要だと考えています。私はきっと日本国憲法にもイロコイ連邦の人々の理念が生きているのではと思っています。

 「政府のモデルを求めて古代史まで遡ったわれわれは、崩壊の種を宿して形成され、もはや存在しなくなった様々な共和国の形態を検討した。また、ヨーロッパの近代国家もすべて研究したが、われわれの置かれた状況にふさわしい憲法は見当たらなかった」

ベンジャミン・フランクリン

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■参考資料
○ポーラ・アンダーウッド著「小さな国の大いなる知恵」翔泳社
○星川 淳 公式ブログ
○喜納 昌吉 公式ブログ
○ウィキペディア(オンライン百科事典)「イロコイ連邦」

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このコラムを書いた人

大類 久隆

商品部担当。とにかく何でも調べるのが大好きです。自称、社内一の加工食品オタク。食べることも忘れて日夜奮闘中……?

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