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生産者のこと

生産者のこと

千葉県銚子市 寺井 洋道さん 「土が伝える 父の想い 息子の想い」

2017.05.29

寺井 洋道さん…「サンズファーム」農場長。父親の寺井 三郎さんが代表を務めるサンズファームでは、冬暖かく夏は涼しい風土を利用し、キャベツ・ねぎ・大根・さつまいも・レタス・かぶ・青梗菜・枝豆・トマト・ブロッコリーなど、20箇所あるという自然栽培の畑から、様々な野菜が年間を通して届く。新しい野菜の栽培にも毎年挑戦し続けている。

 漁業の町としても有名な銚子市は、千葉県北東部にせり出した半島にある。沿岸に暖流が流れ、この地は1年を通して温暖な気候の特徴をもつ。サンズファームへの道のりでは、生産量日本一を誇るキャベツ畑があちこちに広がっている。深緑色の外葉に包まれたキャベツが、海からの風に揺れている。

 迎えてくれたのは、サンズファーム代表 寺井 三郎さんの次男、寺井 洋道さん。家業の農業に就き、4年が経とうとしている。洋道さんは現在、農場長として畑の管理をおこなっている。
 「就農するきっかけは、もともと働いていた工場の不規則な勤務に心身がついていけなくなって辞めたことからです。次の仕事を探す間、家を手伝うことになったんですが、肌に合っていたのか、そのまま続けて今に至ります」
 高校を卒業してすぐに外に働きに出た。やりがいもそれなりに感じていたが、夜勤の仕事よりも太陽のリズムで働くほうが自分に合っており、汗をかくことが何より心地良かったという。
 肉体労働こそ厳しいことには変わりはないが、心から納得して働いているというのが明るい表情から見てとれた。

 小学生の頃から、土日の休みのうち1日は家の手伝い。農家の生まれとして多分に漏れず、キャベツの収穫や、出荷のダンボールを組み立てていたことなどが記憶に残る。食卓には、出荷でもれた野菜の炒めものが週5回はでてきた。かわるがわるやってくる研修生たちがいつもいて、賑やかな家だった。
 一般栽培をしていた寺井さんが自然栽培を始めたきっかけは、洋道さんが小学生の頃に発症した小児喘息だった。喘息が原因で数回の入退院も経験した。それまでの野菜づくりから一転、家族のために「安全な野菜を育てよう」と一念発起したことが、今のサンズファームを形づくった。
 農薬・肥料の投与をやめた畑からは、虫や病気が発生し、苦しい時代もあった。それでも、土づくりから畑と向き合い、少しずつ自然栽培の耕作面積を増やしていった。
 寺井さんが試行錯誤している中も、「大変そうな姿は見せなかった」と洋道さんは振り返る。むしろ自分が食べていた野菜が無農薬だったということも知らず、食卓にあがる野菜をもりもりと食べていたそうだ。

 喘息に苦しんでいた洋道さんも、年々症状は治まり、中学と高校では陸上部に所属。今も週1〜2回のジョギングを楽しむ。
 「子どもの頃、社長(寺井さん)は厳しくて兄弟みんな、怒鳴られないようにビクビクしていたくらい。でも今こうして自分たちが家を手伝うようになったのも、辛そうな表情も浮かべず、毎日生き生きと働く父親の姿が目に映っていたからかもしれませんね」
 洋道さんの2人の弟もサンズファームの一員として畑に立つ。洋道さんは、播種や定植などのポイントとなる作業には必ず関わり、弟さん達は作業に専念する。
 「家族でちょっとした口ゲンカになった事があって。3番目の弟が『俺は金のために仕事してるんじゃない、親孝行がしたいんだよ!』って言った時はみんな笑いましたよ。でも、かっこいいなとも素直に思いました。自分も同じ気持ちなんです」

 出荷中の春にんじんの畑に案内してもらった。トンネル(畝の上をビニールで被覆したもの)で保温はされているものの、肌寒い3月の空の下、にんじんの葉が針葉樹の森のように生い茂っていた。
 細い畝の中でも、太陽の光が良く当たる南側が良く育つ。反対側のにんじんはまだ小ぶりだ。作物の生育を見極め、順番に収穫していく。それぞれに特徴を持った畑が点在し、一般栽培の畑をすべて加えると、その数は90箇所以上。なかには耕作放棄地を畑に戻している場所もある。農業法人とはいえ膨大な広さだ。
 寺井さんが、空いている土地を引き受けて畑地に戻したり、研修生の受け入れに取り組んでいるのは、いつかは帰ってくるかもしれない、地元を離れてしまった若者たちを想ってのことだ。戻ってきた時に、すぐに耕作できる準備をしている。一大農業地帯といえど、銚子にも農業の高齢化と離農の影はつきまとう。

 「この面積の畑は、見て回るだけでもかなり時間が取られますね。朝、集まったら社長と打合せをして1日の作業が始まりますが、作業効率や改善策を提案しながら仕事に取り組みます。畑によって手がかけられない場所があると、思うように収穫できず悔やむこともあります。ねぎにもっと土寄せしてあげられたら、もう少し大きく育ってくれたのかなぁとか。でも、そういった悔しさを翌年改善していくバネにしていくことが、やりがいに繋がっています」
 洋道さんが抜いて見せてくれたにんじんは、すらりと整い、ぴかぴかと光沢を帯びていた。
 「この間、収穫したにんじんをその場で食べたら、甘くて、すごく美味しいなぁと改めて感じました。外の野菜を食べる機会もないので美味しさの度合いがわからないのですが。もしダイエットするならこれだけ食べていてもいいかなと思うくらいでしたね(笑)」

 サンズファームでは、一般栽培も含め、全ての畑に除草剤をつかわない。そのため、草の管理には相当の手間を要する。刈り払い機をかついで畑に丸一日立つのはさすがに堪えるそうだ。
 「大変は大変ですが、苦労とは思っていません。昔は失敗も重ねてきたようですが、その時代があって今があるので、作業ひとつ大切にしていきたいと思います。親が始めた自然栽培ですが、 ニーズもあり出荷量も増え続けています。そんな面もとてもありがたく、モチベーションに繋がっています」

 サンズファームの作業所は、収穫した野菜の選定や仕分けのほかにも、自然栽培とともに経営の柱である加工用大根の洗浄作業で活気に満ちている。その中には、寺井家の家事全般を今でも元気よくこなす祖母の姿もあった。
 「この数年仕事して、なんとか全体像が掴めてきたのではないかと思います。まだまだこれからですが、家族やパートさんと仲良く、そして皆でいい野菜をつくっていく事が目標です」

 仕事の事でしか口を開かない朴訥な人、と洋道さんは父を語る。しかし、家族や地域に対する父の想いは、土を通して確かに伝わっている。
 作業所の側のハウスの中では、定植を待つ夏野菜の苗たちが天を目指して静かに呼吸していた。

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このコラムを書いた人

吉村 鮎

配布冊子TUMUGIの編集担当。その他こまごま制作しています。植物とうつわを集めるのが好き。大好きな自然栽培のお米がもっと広がることを願って、日々取り組んでいます。

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